業界再編

家電量販店業界再編M&Aの歴史

家電量販店業界の動向

 

業界の課題

 

かつての国内の家電市場は、地デジ化移行ニーズによる薄型テレビの売上や、家電エコポイントなどを追い風に成長してきました。しかし、それらが終了した2011年を境に、反動からテレビ販売が不振となりメーカーの価格競争が激化して、量販店はおろか家電メーカーへも大きな悪影響をもたらしています。

 

また、ネットショッピングの低価格販売により価格競争も激化。既に価格面では、ネットショッピングに対抗できなくなってきており、家電量販店は窮地に立たされているといえるでしょう。

 

それに対し、小売業界全体は、一時は販売額減少の一途を辿っていましたが、平成29年に3年ぶりに増加。その後も堅調に推移しています。この要因の一つとして、コンビニ業界、スーパー業界の各社が経営戦略として、多数のM&Aを行ったことにより再編が完了したことが挙げられます。

 

家電量販店や百貨店は引き続き厳しい状況となっており、今後急速に再編が繰り広げられることが予想されます。

 

業界各社の動向

家電量販店の特徴は、家電製品を大量に仕入れて卸値を抑え、安い価格で商品を提供することです。そのため仕入れのスケールメリットを取ろうと、競合を買収する動きが活発化しました。

しかし、それだけではネットショッピングとの価格競争には勝てず、異業種に参入し事業の多角化を目指す動きも出てきています。

その他、価格競争以外で、家電量販店ならではのサービス提供を積極的に行うなど、各社ネットショッピングとの差別化を図ってはいますが、決して順調とは言えない状態です。

 

M&Aの活用方法

 

このような状況から多くの会社がM&Aを行っています。M&Aの目的には、スケールメリットと事業の多角化という二つの目的があります。

 

スケールメリットを目的としている場合、2012年に、業界7位のコジマを買収し、業界2位になったビックカメラのように、同業他社と経営統合を行います。スケールメリットと同時にノウハウや人員を強化する効果もあります。

薄利多売が基本の家電量販店業界において、仕入れのスケールメリットを獲得したうえでさらに販売エリアを拡大していくというスタイルが定着しており、数社の大手による寡占化は今後さらに進んでいくものと見込まれます。

 

二つ目の事業の多角化を目的としている場合、コア事業のみに拘らず、そのノウハウを生かして異業種に進出し、新たな事業を打ち立てていこうとする動きがみられます。

ヤマダ電機は、2011年に中堅ハウスメーカーであるエス・バイ・エルを子会社化したのを皮切りに、次々と住宅・建築関連事業の会社を子会社化。2018年にはそれらを合併し、ヤマダホームズを設立しました。

その他にもユニクロと提携したビックカメラなど、異業種の会社と手を組み、他業界に進出していく動きは多くあり、今後も加速していくものと見込まれます。

 

 

 家電量販店業界の今後

コンビニ業界で既に再編が完了したように、成熟期を迎えている家電量販店においても、まもなく業界再編が完了するでしょう。

そうなると、2009年に約1200店舗の規模を誇っていたam/pmがファミリーマートに買収されたように、今後家電量販店業界においてもM&Aの規模がより大型化していくと考えられます。

 

再編が完了に近づけば近づくほど売買価格は下がっていきます。

既にビックカメラに約140億円で買収されたコジマは、高値で譲渡することに成功した上、屋号も残すことができ、現在もビックカメラの資本やネットワークを活用して営業を続けています。

 

人口が減少するこれからの日本において、経営者はどこと組むかを素早く判断し、競争から協力へと戦略をシフトしていかなければならないのです。

 

大手各社の成長戦略

ヤマダ電機

ヤマダ電機の特徴的な成長戦略としては、大きく二つ挙げられます。一つ目は、地方展開、二つ目はM&Aによる積極的な異業種への参入です。

 

地方では、地方店舗をテックランドという店舗ブランド名で展開し、1階に駐車場スペース、2階以上に売り場を持ってくるというロードサイドに適した店舗設計とすることで、地方都市に浸透することに成功しました。

このように、地方の郊外型店舗を急速に拡大していくことで成長を遂げていった歴史があるヤマダ電機は、今後も引き続きこの戦略をとっていくものと思われます。

 

二つ目のM&Aによる積極的な異業種への参入については、前述の住宅関連事業のほか、金融関連事業、エネルギー関連事業など、幅広い業種に参入しており、今では当たり前になりつつある、家電量販店の異業種参入の草分け的な存在であるといえます。

 

 

ビックカメラ

ビックカメラの特徴的な成長戦略としては、M&Aによる垂直統合が挙げられます。

 

ビックカメラは、ヤマダ電機と対照的で、都市圏を中心に店舗を拡大してきた歴史があります。2012年にコジマを買収して地方戦略を図ったものの、コジマの利益率はM&A後に年々悪化。

そこでビックカメラは2018年に、元々下請け業者であった、家電の配送及び設置事業を行うSKサービスを子会社化し、物流拠点の統合による利益率の向上を図りました。

 

ビックカメラは、ユニクロと提携はしたものの、それ以外で特にM&Aを用いた異業種参入には変わらず消極的な様相です。よって今後も異業種参入よりも、水平統合のためのM&Aを積極的に行うものと見込まれます。

 

ノジマ

ノジマの特徴的な成長戦略としては、大きく二つ。店舗ごとの経営と、フィンテック事業への参入です。

 

ノジマは、地方か都市圏かのどちらかに力を入れてきた他社と対照的に、各店舗ごとに経営を一任しています。

家電量販店業界では、中央集権的に経営を行うことが多い中、ノジマでは地域や店舗の形態(単独か駅ビルか等)によって求められるサービスは異なるとのとの考えで、かねてよりこの戦略をとってきました。この戦略が功を奏し、大手に負けず劣らず好業績を収めています。

 

二つ目については、今年5月に、スルガ銀行とクレジットカードやフィンテック事業の共同展開などに関する業務提携で基本合意したことで、家電量販店業界で初めてフィンテック事業への参入に乗り出しました。

ノジマは2015年に携帯販売大手のアイ・ティー・エックス(ITX)を、2017年にインターネット事業のニフティを買収。あらゆる家電製品がインターネットを通じてつながるIoT時代を見据え、大型M&Aを続けて行っています。

今回のフィンテック事業への参入を通じ、ノジマのこの路線での積極的な展開の意向が明確になったといえます。

 

今後の家電量販店業界で生き抜くには

国内の家電EC市場規模は’05年に4,650億円だったものが’16年には1兆4,278億円となっており、その後も継続して成長しています。

そういった中、価格競争で勝つことが難しい家電量販店業界は今後芳しいとは言えず、その中で勝ち抜き、主要プレーヤーとなっていくことは簡単ではありません。

 

現在多くの会社が異業種に参入し、家電量販店事業以外で収益をあげようという動きをしていますが、これでは焼け石に水に過ぎません。

それよりも、同業同士が協力し、強者連合を作り出すことで復活を遂げた業界を手本に、家電量販店業界においても協力することで、業界を復活させ、延いては日本の経済を守ることにつながるのです。

 

 

日本M&Aセンター・業界再編部 岡部諒平