業界再編

【経営者向け】『林原家 同族経営への警鐘』M&Aコンサルタントが経営者に推薦する1冊

『林原家 同族経営への警鐘』の要約・あらすじ・特徴

創業100年を超える企業の破綻の真相に迫る

2011年2月、岡山県に本社を構える日本が誇るバイオ企業集団『林原』の中核グループ3社が会社更生法を適用するというニュースが世間を騒がせました。

 

1886年創業の100年を超える歴史を持つ老舗企業がいきなり事実上の破綻に追い込まれたのです。 膨大する研究開発費を賄うために融資を継続してもらう必要があった林原は、銀行に虚偽の決算書を提出していたのです。

 

実態は債務超過であった林原はその後会社更生法を適用し、事実上の破綻に至りました。 この本の中では林原4代目社長の林原健氏が会社が破綻に至った真相など、当時を赤裸々に告白しています。

弟から初めて聞いた会社の実情

当時の林原は林原健氏が社長を務め、弟の林原靖氏が経理部門での責任者を務めていました。社長は研究開発部門、弟は経理等の会社の実務全般を担当し二人三脚で経営をしていました。彼らの父が52歳という年齢で若くして亡くなった後、林原を支えていたのは間違いなくこの二人でした。

 

一方で社長は会社の経理を弟に放任していたため、月次の損益だけでなく年間の貸借対照表や損益計算書の内容すら把握していませんでした。そして経営破綻が発覚した際、社長は弟からではなく銀行から衝撃の事実を聞くこととなったのです。

 

社長は当時なにが起こっているかわからず、弟の口から話される会社の実態にただ驚愕することしかできなかったのです。

 

なぜ弟は兄に会社の実情を隠し続けたのか。 強権的にふるまっていた父と兄弟間の関係やもう一人いた弟の暲の存在など、歪んでしまった兄弟間の関係について生い立ちなどから詳細に書かれています。

 

老舗メーカーを破綻させた社長が問う同族経営の是非

同族企業では当たり前である社長への権力集中、縁故採用、根拠のない信頼感、といった様々な要因について強み、もろさについて林原の事例をもとに社長本人の考えが記されています。同族企業の経営者の方であればその内容について共感される部分も多いのではないかと思います。

 

同族企業の成功例として日本各地で取り上げられていた林原でしたが、実際には同族経営のもつ特有のもろさにより破綻に追い込まれてしまいました。成功していた時代の同族経営の強さと、傾くと手が付けられないほど崩れてしまう同族企業の特徴について林原社長独自の視点で詳細にまとめられています。

 

『林原家 同族経営への警鐘』を推薦する3つの理由

名門企業が倒産へ、周囲の人間の反応は

世界的な名門バイオメーカーであった林原が破綻に追い込まれた道筋や要因が詳しく書かれているこの本は、多くの経営者の方に読んでほしいと思っています。特に社長の健氏や弟の靖氏、また先代の社長がどのような経営、関係であればこのような事態を防げたのか、このような視点で本書を読まれると面白いかもしれません。

 

社長や弟だけでなく、社内の役員、従業員、社外の銀行や弁護士といった様々な関係者が登場します。彼らが会社の破綻といった重大な事態の際にどのような反応をするのかといったことが書かれているのも非常に興味深い点だと思います。

 

彼らは会社の危機にどのように変わるのか、だれが味方になってくれるのか。自らの会社が危機に陥った時のシミュレーションをしてみるのも、いざというときの備えになると思います。

 

今後埋まることはない兄弟間の溝

経営破綻に追い込まれて以降、ともに経営をしていたこの兄弟は顔を合わせることはほとんどなくなりました。またお互いがお互いのことを批判するなど、二人の溝は修復することが不可能なまでに深くなってしまいました。このような悲惨な歴史を繰り返さないためにも、多くの経営者の方にこの本を読んでいただきたいと思います。

 

今回ご紹介させていただいた本は林原の4代目社長の林原健氏の著作でしたが、実は弟の林原靖氏も『破綻』『背信』という題の本を出版しています。そちらの本では兄の健氏とは全く別の視点で破綻の物語が書かれています。両者の視点を読み比べていくと、より深くこの破綻の真相について理解ができると思います。

同族企業のもろさと本来の強さ

林原という日本を代表する同族企業ですらこのように破綻してしまうというのは全国の経営者の方もとても驚かれたと思います。実際にここまでずさんな経営がなされていたとは、彼らの告白がなければ知ることはなかったはずです。

 

実際にこちらの書籍と林原靖氏の『破綻』と『背信』は、同族企業やファミリービジネスについての研究を行っている研究機関で参考図書として採用されており、多くの同族企業関係者の方に読まれています。

 

同族企業が抱えるもろさについて彼らの教訓から多くのことが学べるはずです。またその一方で彼らが発展してきた理由も同じく同族企業であるからなのです。
その本来の強さを生かすべく、多くの経営者の方にこちらの本を読んでいただき、会社の発展への一助にしていただければと思います。

業界再編部 調剤薬局業界支援室

河田 航佑

埼玉県浦和区出身。慶応義塾大学経済学部卒業後、日本M&Aセンターに入社。入社以来、調剤薬局専門チームにて調剤薬局業界の再編に取り組む。主に関東圏の調剤薬局を担当している。

埼玉県浦和区出身。慶応義塾大学経済学部卒業後、日本M&Aセンターに入社。入社以来、調剤薬局専門チームにて調剤薬局業界の再編に取り組む。主に関東圏の調剤薬局を担当している。