業界再編

学習塾業界再編M&Aの歴史

はじめに

学習塾業界は現在、過渡期を迎えています。学習塾の事業所数は2017年に過去最高の10,434ヶ所を記録した一方で、2018年にはその増加率が0%を記録しました。今後はどうなっていくのでしょうか。

 

 

学習塾と同様の拠点ビジネスを展開する家電量販店などは、店舗数のピークを迎えた後の20年間で急速な業界再編が起こり、事業所数は60%ほどになってプレイヤーの数も大きく数を減らしました。

 

本記事では、学習塾業界の構造の動向について論じていきたいと存じます。

 

学習塾業界の構造

 

小規模事業者が大きな割合を占める

学習塾業界は少子化の流れに逆行するように市場を拡大してきました。2017年度には事業所が10,434ヶ所となり、過去最高を記録しました。

 

その背景には、個別指導に対するニーズが高まりと、参入障壁の低さが要因となり、小規模事業者が多く参入してきたことが挙げられます。

 

経済産業省「特定サービス産業実態調査」によると、全事業所数の約6割が従業者4人以下の小規模な学習塾となっています。

 

 

出所:経済産業省「特定サービス産業実態調査」

 

 


出所:経済産業省「特定サービス産業実態調査」

 

 

一方で、近年においては小規模事業者数の増加は止まっております。つまり学習塾市場は縮小に向かっていることが示唆されているのです。

 

大手事業者の同士の積極的なM&A

 

小規模事業者の増加に対抗して、大手事業者は積極的な大規模M&Aにより、異なる顧客層・授業形態への拡大を加速していきました。

 

近年の主なM&A例は以下にあげられます。

 

 

このように、大手事業者はM&Aによって事業領域を広げることで、相互送客の実現や人材の共有など経営の合理化を加速させていきました。

 

学習塾業界への大きな波

 

これまでに述べた「小規模事業者の参入減少」・「大手事業者同士のM&Aの進行」は、学習塾業界の成長はピークを過ぎ、まさに業界として成熟期を迎えたことを示しています。

 

成熟期とはつまり、大手事業者が業界全体のシェアの大部分を占め、中小中堅企業は年々経営が苦しくなっていくことを示しています。

 

M&Aにおいては、大手事業者同士のM&Aが進むと、小規模事業者に対しては買い手がつきにくくなっていくのです。

 

その中で、さらに学習塾業界の業界再編を加速させる波が二つあります。

それは以下の二点です。

 

①少子化の加速度的な進行

②映像事業の一般化です。

 

少子化の加速度的な進行

 

学習塾業界は少子化の影響を直接的にうける業界です。小中高年代の人口はその構造上、加速度的に減少していくことは明らかです。

 

 

事業所数の増加に対して顧客の加速度的な現状は、体力のない事業者を強く圧迫し、業界の再編を急速に加速させることは明らかです。

 

映像授業の一般化

 

映像授業の一般化は、地方の事業者の顧客を大きく減少させる一因となっております。

 

映像授業のメイン、はナガセの「東進衛星予備校」や市進ホールディングスの「ウイングネット」を中心とした大学受験者向けのサービスでありましたが、近年では、さなるの「@will」や、すららネットの「すらら」といった小中学生向けのサービスへと拡大しています。

 

また、スタディサプリを中心としたリクルート社のサービスは有料会員者数を58万人まで増やしており、今後も急拡大していくことが予想されます。

 

映像授業の特徴は都心部での有力講師の授業を全国で受けられる点ですので、特に地方の事業者や中小の事業者の顧客へ大きな影響を与えることは必須だと考えられます。

 

学習塾各プレイヤーの今後

 

業界の成熟期に加え、少子化や映像授業による業界の変動が起こる中、各学習塾プレイヤーはどのような今後を迎えるのでしょうか。

 

学習塾業界を大手集団指導塾、地方集団指導塾、大手少人数指導塾、小規模少人数指導塾の4プレイヤーに分けて解説します。

 

大手集団指導塾-異なるセグメントへ積極的なM&A

 

大手集団指導塾は、従来の学習塾分野だけでなく、英語教育やプログラミング教室、オンライン指導といった異なる分野の塾へのM&Aを展開することが予想されます。

 

大手予備校の河合塾グループは、英会話教室を運営する日米英語学院(大阪市)の買収をしました。

 

栄光HDは2010年に英語教材輸入販売のネリーズグループ、及び語学教室「シェーン英会話」を運営するシェーンコーポレーションを子会社化しました。

 

市進HDも九州の日本語学校を展開する日本語アカデミーを譲り受けました。

このように同業種よりも隣接業種への進出により活路を見出すと考えられます。

 

地方集団指導塾-少子化の影響を最もうける

 

地方にて4~10ほどの事業所をもつプレイヤーは、各地域の有力学校への進学に強みを持ちます。

 

一方で、少子化による生徒数減少に加え、広告宣伝費や人材採用に対するコストの増加が深刻化しております。その背景の中、地方の有力学習塾同士のM&Aや大手学習塾とのM&Aは必至です。

 

実際に、2017年には千葉内房エリアで学習塾経営の集学舎が早稲田アカデミーへ株式譲渡を行い、また、神戸を中心に7つの事業所を展開する京大ゼミナール久保塾株式会社もウィザスへ株式譲渡を行いました。

 

このように地域に根差した学習塾の大手グループ入りは多く行われております。

 

そして、先述の通り業界の成熟期を迎えた学習塾業界では、買い手優位な市場となっていくことが予想されます。

 

大手少人数指導塾-同業種、異業種へ積極的なM&A

 

大手少人数指導塾は、そのノウハウと人材を利用して積極的な事業拡大を行っています。

 

個別指導最大手の明光義塾はFC方式で展開し急速に拡大してきました。その明光義塾は、2014年にフランチャイザーとして87事業所を持つMAXISホールディングス、2018年には43事業所をもつ株式会社ケイ・エム・ジーコーポレーションを買収するなど、M&Aによる規模拡大に積極的です。

 

さらに2009年9月に医学部専門塾である東京医進学院を買収するなど、異なるセグメントへの進出も活発化しています。

 

このように、大手少人数指導塾は積極的な大型のM&Aによって規模拡大、新規事業の開発を行っていくことが予想されます。

 

 

 

小規模指導塾-大手少人数指導塾とのM&Aが活発化

 

地域へ根差した業態の小規模指導塾は、個別指導へのニーズ拡大に伴って、多くのプレイヤーが存在しております。しかし、少子化や映像授業の一般化によって採算の合わない事業所も増えております。実際に2018年度にはその数を減らしています。

 

今後は、大手個別指導塾グループの傘下入りをすることで業績の安定化を図っていくことが予想されます。

 

(弊社仲介事例)https://www.nihon-ma.co.jp/page/interview/keisetsu-clipcor/