製造業

【製造業経営者向け】『電子部品・営業利益率20%のビジネスモデル』 M&Aコンサルタントが経営者に推薦する1冊

「電子部品・営業利益率20%のビジネスモデル」の要約

高収益企業のカギは「競争しない経営(=ニッチ)」

経営戦略を議論する上で、競合会社に対してどうやって勝つのか?について「考えたことがないよ」という経営者はほとんどいないのではないでしょうか?

 

しかしながら「戦略」という言葉は文字通り「戦いを略する(戦わない)」と書きます。
本来の戦略とは、「勝つ」ためのものではなく「戦わない」ためのものなのではないでしょうか。

 

本書のキーワードは「ニッチ」です。「何でも屋」ではなく「○○の××社」という不動の地位を築いて、磨きぬいていくこそが、高収益経営を貫くための至上命題です。

 

利益率は技術力ではなく力関係で決まる。

昨今、多くのものづくり企業が、熾烈なグローバル競争により厳しい経営を余儀なくされている一方で、「電子部品産業」においては、村田製作所、日東電工、マブチモーター、日本電産を初め多くの企業が、他社とは違う技術・サービスに特化し、特定領域をとことん磨きぬくことで「寡占状態」を作り出し、驚くべき高収益を実現しています。

 

「大企業ならではの技術力があるから差別化できているだけなのではないか?」と思われるかもしれませんが、利益率は技術力ではなく力関係(いかにして寡占的立場を作るか)で決まります。

 

かつて、液晶テレビは高い技術力と豊富な設備資源があって初めて成り立つ産業でしたが、
時が経つにつれて、多くの海外企業との同質競争に陥った結果として、収益悪化に歯止めが利かなくなりました。

 

その一方で、「持っているだけでかっこいいと思われる」、ブランドによる寡占状態を作り出したルイ・ヴィトン等を参加に持つLVMHグループは粗利率65%、営業利益率18%という高収益体質を実現しています。純粋な「技術」という点では、鞄よりも液晶パネルを作るほうが明らかに難しいはずですが、一方は赤字で人員削減を余儀なくされ、一方は羨望の的なのです。

 

サービスやブランド等の「非技術ニッチ」にこれからは着目すべき

もちろん唯一無二のセンサ技術を通じて圧倒的な競争優位を実現している浜松ホトニクスのような企業も存在します。取り分け、わが国のものづくり分野においては技術のみがフォーカスされることが多いですが、サービスやブランドを通じて実現するニッチに目を向けることが、これからの時代は求められているのではないでしょうか。

 

ブランドでいうなれば前述のLVMHグループ、サービスではザッポス(無条件返品)やAmazon(即日配送)等が考えられます。

 

単なるポップコーンであっても、小売店で他社と同じ棚に並べるのではなく、映画館で作って売ることで、何倍もの付加価値を生み出すことができます。新幹線の車内でのお弁当販売も完全な「独占市場」です。ポップコーン、お弁当然り、「競争しない市場」で戦うために必要なのは必ずしも技術だけではないのです。

 

ニッチの作り方 

ニッチを実現するにあたって確実に言えることは「特定分野に集中すること」です。
ある分野に集中することで、顧客が「○○なら××」と認識するようになり、顧客からの相談・対話を通じて、特定分野の知見を継続的に蓄積することができます。

 

結果として、他を寄せ付けない企業に可能となる、この「自己強化プロセス」に入っていくことが最も重要です。

 

次に「どの分野に集中するのか?」についてはどう考えていけばよいのでしょうか。
(1)外部 : 成長性・収益性、参入障壁
(2)内部 : 自社のサービス・技術が、当該産業において競争力を発揮できるか

 

の2つの視点で見てみると、一般的には前者に重心がおかれていることが多く、いわゆる「成長産業」に多くの企業が挙って参入した結果、潰しあいになり、赤字が続き破綻・撤退に追い込まれる企業が後を絶たないのです。

 

しかしながら、成功することを目指すのではあれば、外部(成長産業であるかどうか)に着目するのではなく、あくまで内部(その分野において他社には負けない自信があるか、創れるのか?)に焦点をあてることが重要なのです。

 

本書を推薦する3つの理由

普遍性 ~あらゆる産業に通じる経営の真髄を~

本書は、電子部品産業に関連する記述だけではなく、商社、外食産業、小売業、といったあらゆるビジネスを横断的に分析した上で、「戦わない」ためにとるべき選択肢・考え方を説いております。業界の枠組みを超えた「経営の真髄」が詰まっている良書です。

 

実用性 ~尖るための「方程式」を詳しく紐解く~

本コラムの中での「ニッチの作り方」として要約しましたとおり、本書では様々な業界や企業を分析した上で、ニッチをいかにして実現していくか?についても大変詳しく記述されています。

 

「何を自社で手がけ、何を外部委託するのか?」「ニッチの極大化」・・・様々な切り口で、経営者が何を考え・実践すべきなのかが端的にまとまっています。

 

読みやすい ~身近の事例で、簡潔にわかりやすく~

「平易な言葉しかないけれどスルメのような本でありたい」という冒頭の宣言どおり、本書は、単に高収益企業の経営に迫るだけではなく、身近なトピックにも触れながら、できる限り読者にとって腹落ちしやすい形で「ニッチであること」の重要性を説いています。

 

「商社は産業界の秋元康である」「ビジネスがグローバル化(地域大会⇒全国大会⇒世界大会)するにつれてニッチであることの重要性が高まる」など、詳細は本書を是非ご覧頂きたいのですが、筆者独自の視点を通じた例え話が大変豊富であることも本書の魅力なのではないでしょうか。

業界再編部 IT業界支援室/製造業界支援室

太田 隼平

京都大学経済学部を卒業後、株式会社キーエンスでセールスエンジニアの経験を経て、日本M&Aセンターに入社。ITソフトウェア業界を専門とし、地域問わず中小中堅企業の事業承継及び成長戦略に関するコンサルティング業務に注力している。

京都大学経済学部を卒業後、株式会社キーエンスでセールスエンジニアの経験を経て、日本M&Aセンターに入社。ITソフトウェア業界を専門とし、地域問わず中小中堅企業の事業承継及び成長戦略に関するコンサルティング業務に注力している。