業界再編調剤薬局

調剤薬局業界でM&Aが起こる理由②

「調剤薬局業界でM&Aが起こる理由①」を読む

 

2つ目の「売り手の事情」は薬剤師不足・後継者不足である。

 

特に規模の小さな薬局では薬剤師を確保するのが難しくなっている。薬学部に6年生が導入されて以降、その傾向が顕著になってきた。薬学部生の間で「医者と同じ6年間学んだのに、小さな町の薬局に就職するのは・・・。」「少なくとも何十店舗は運営しているような企業に入社したい」といったブランド志向が強まっている。その結果、薬剤師確保に悩む高齢の薬局経営者が増えている。

 

後継者問題も深刻で、他業種でもいえることであるが、少子高齢化の進行により、「継がせる子供がいない」というケースは年々増え続けている。他業種だと、人材が確保できないため閉鎖するという話もたびたび耳にするが、薬局ではそういう話はあまり聞かない。むしろ「地域のことを思うと閉鎖はできない」「業務の連携先である医師は70歳80歳になっても頑張っている、うちが閉鎖するわけにはいかない」といった声ばかりが聞こえる。

 

そこで薬局を存続させるために、第三者に薬局を譲渡するM&Aが行われるのである。

最近では40代や50代のオーナーが、自身は残ったままで、大手のバックアップを受けるという成長戦略型の譲渡も急増している。

 

3つ目の「買い手の事情」は、薬局業界の飽和状態だ。

 

社会保障費削減の流れが明確な中、企業(特に上場企業)は常に成長を求められる。診療報酬の単価が下がる以上、取るべき成長戦略は1つ、新規出店を増やし、顧客をより多く集めて売上を伸ばすことである。ただし、日本の調剤薬局はもはや飽和状態であるため、新しい薬局をどんどん開設していくという戦略は極めて取りにくいのが現実だ。日本国内で一般市民を対象とした業態の場合、どんな業種であってもおおむね6万拠点で頭打ちとなる。実際、運送会社コンビニエンスストアも歯科医も、事業所数はそのくらいの数で落ち着いている。そして調剤薬局の事業所数は現在5.8万箇所をに達しているのだ。

 

この状況にあってそれでも上場企業が成長を遂げようとすれば、同業他社のM&Aを行うこととなる。少なくとも、かつてのガソリンスタンド業界のように競合激化を覚悟の上でわりに合わない出店を続け、ライバルも自らも共倒れになってしまうよりは、M&Aによってともに成長を目指すことのほうが現実的である。上場企業や中堅企業の経営層の多くはそのように判断してており、近年まとまった規模の薬局同士の連携が増えているのはその証拠であろう。

 

たとえば、四国でトップクラスの規模を誇った西日本ファーマシーや静岡県で屈指の規模を誇ったメディオ薬局はアインファーマシーズに譲渡された。九州北部を中心に調剤薬局を展開するトータル・メディカルサービスは札幌市に本社があるメディカルシステムネットワークのグループ会社の一員となった。また、最近では青森県最大規模のアポテックも同様にメディカルシステムネットワークのグループ会社の一員となっている。

 

今売却された具体例として挙げた薬局は経営上の問題を抱えていたわけではない。いずれも、利益を出していた優良企業ばかりである。それでも、地域医療にどう貢献できるか、従業員にとってベストな選択は何なのか、自社が成長するためにはどうしたらよいか、という観点から、大手グループと連携してやっていくことがベストだと判断して譲渡したのだ。

 

3つの理由により、今後も調剤薬局M&Aは件数・規模ともにさらに拡大することが予想される。