M&A全般業界再編住宅・不動産・設備工事業界

2018年の建設関連業界M&A動向まとめ

2012年から始まった今の景気回復が高度経済成長期の好景気「いざなぎ景気」を超えて、戦後2番目の長さになったことが2018年12月の内閣府の研究会で確認された。

 

バブル崩壊後の建設不況、リーマンショックとその後の民主党時代の冬の時代を経て、地域などにより程度の差はあるにせよ、多くの建設業・不動産業の企業も今の景気回復を感じているのではないだろうか。特に、オリンピック関連以外にも多くの大プロジェクトを持つ東京、「天神ビッグバン」が進行する福岡、2025年の万博開催が決定した大阪など、都市部では今後も大きな建設需要が見込まれている。

 

一方、平成最後の年となる2018年の「今年の漢字」は「災」と発表された。6月の大阪北部地震、西日本を襲った集中豪雨、9月の北海道地震、巨大台風と、日本全国を災害が襲い、建設業を中心とするインフラ産業は混乱を極めるとともに、その存在の重要性を認識させるものであった。

 

業界の「災」というとスルガ銀行の不正融資問題などによる不動産業界への融資縮小の連鎖が挙げられるであろう。異次元の金融緩和以降、急激に拡大してきた不動産業界にはブレーキがかけられることとなった。建設業では埼玉県に本社を構える株式会社エム・テック(資本4億6637万5000円)の倒産があった。2015年期には245億円の年商を誇る埼玉県有数の建設会社であったが、253億円超と多額の負債を抱え民事再生法の適用の申請に至り、大きな衝撃と損害を与えることとなった。

 

そのような中、親族・社内に跡継ぎがおらず、後継者問題からM&Aを検討する企業や、業界再編を勝ち残るために積極的にM&Aを活用する企業の増加により、建設・不動産業界のM&Aは景気回復に大きく後押しされ、11月末時点で208件と2000年以降における最高件数である2005年の199件をすでに超えており、2000年以降過去最高件数となっている。(公表事例に限る)

 

建設・不動産業界は「メガ・プラットフォーム」の時代へ

 

現在の建設・不動産業界M&Aで日本M&Aセンターが最も重要な動向と考えている点は、大手企業を中心に「メガ・プラットフォームの構築」を志向する企業群が増えていることである。これは過去様々な企業が手がけてきた「多角化」とは異なり、業界内での競争に勝ち抜き、顧客・地域から選ばれる企業グループを形成するための「本業加速型M&A」といえる。

 

 

 

 

 

「通信インフラ」から「社会インフラ」へ。大手通信工事会社が業界再編の台風の目に

 

2018年10月、コムシスホールディングスがNDS・北陸電話工事・SYSYKENを、協和エクシオがシーキューブ・日本電通・西部電気工業を、ミライトホールディングスがTTK・ソルコム・四国通建を買収。これら大手3社による9社同時買収により、通信工事業界は本格的に3社に集約され、業界再編が終了したと見られている。

 

大手3グループは、近年、電気や管などの設備工事、土木・建設工事、ソフトウェア開発などの会社をグループ化し、通信インフラ建設の会社から、社会インフラ全般を支える企業群へと進化を進めており、今後もメガ・プラットフォームとしての存在感を増していくと考えられる。

 

 

 

 

 

 

自由化以降、積極的なM&Aで「地域」「業種」の枠を超えるエネルギー業界

 

2016年4月の電力自由化、2017年4月の都市ガスの全面自由化以降、エネルギー関連業界では、地域・業種の垣根を越えた営業活動が活発になり、そのための有効な手法としてM&Aが多く用いられるようになってきた。エネルギー関連の企業によるM&Aの成約件数は年々増加しており、引き続き建設・設備工事業界の再編を牽引していくと考えられる。

 

・2016年、中部電力子会社のトーエネックが東京でプラント配管工事などを営む旭シンクロテックを買収

 

・2017年、西部ガスが東証一部上場のマンション販売会社エストラスト(山口県)を買収

 

・2017年、九州ガスホールディングスが鋼構造物工事業のケンコー(長崎県)を買収

 

・2018年、四国電力子会社の四電工が有元温調(兵庫県)、アイ電気通信(大阪府)、菱栄設備工業(埼玉県)の3社を買収

 

M&Aを活用し、建設業での事業展開を進める有力メーカー企業

 

建設・設備工事業界は同業のみならず、異業種の企業が譲り受け企業となる事例が目立っているが、その中でも自社製品を持つ「メーカー」の企業が建設・設備工事会社をグループに迎え、新勢力として名乗りを上げている。製品開発と施工力の相乗効果により、新たな製品の開発、新たな技術提案、また、売上の波が大きい建設業において、グループ経由の受注による安定性の実現などを目指している。

 

・日本を代表するメーカーであるパナソニックが年商352億円を誇る総合建設業の松村組を買収。パナソニックの誇る先進技術・企画設計力と、松村組の誇る高い施工能力・ノウハウという、両社の経営リソースの融合により、より付加価値の高い住空間ソリューションを創出し、事業拡大を図っている。

 

・前年の2017年には、接着剤国内最大手起業のコニシが静岡県藤枝市に本社を構える地域最大手企業の角丸建設を買収。コニシの誇る補修・改修・耐震・補強工事に関する材料・工法・施工能力と角丸建設の誇る建築工事、リノベーション工事、土木工事の高い施工力を組み合わせることで、老朽化する社会インフラの改修・補修需要を取り込みを目指している。今後もこのような有力企業による建設業の買収は進んでいくものと考えられる。

 

 

売上5~10億円の電気工事会社の株価が上昇

 

電気工事会社は同業によるM&Aニーズも多くあるが、メガ・プラットフォームにおける重要な機能の一つとして隣接・関連業種から高く注目されている。電気工事会社は年商1億円前後の企業においても多くの引き合いがある状況だが、組織化され一定の従業員で構成される年商5~10億円の企業が特に高く評価されてきている。

 

 

大手の採用ブランディングにより人材不足の波を乗り越える

 

建設・不動産業の企業は「今までとは異なる経営」が求められる時代を迎えている。その大きな理由に、人手不足が業界最大の課題である建設業界において、今後5年間で『団塊世代大量離職に伴う就業人口の激減』『働き方改革による一人当たり就業可能時間の激減』の大きな2つの波が迫ってくることが上げられる。

 

これからの時代は今まで以上に働き手からも選ばれる会社に変革していくことが求められる。「報酬・福利厚生」「人材教育制度」「仕事での経験」などにおいて高いブランド力を持つことが経営の重要な要素となり、中堅・中小企業が大手の採用ブランディングを目的としてグループ入りする事例が増えてくるだろう。

 

リーマンショックから10年が経ち、東京オリンピックの前年となる2019年をついに迎えることになる。金融情勢により企業経営もM&Aも大きく左右されることになるが、M&Aで失敗しないためには、譲渡希望企業は「タイミングを逃さないこと」、買収希望企業は「本業加速型のM&Aにこだわること」がポイントになるであろう。

 

日本M&Aセンター 業界再編部 副部長 建設関連業界責任者 西田賢史