M&A全般業界再編食品・外食

2018年食品業界M&Aの振り返り 件数は過去最多を更新

158件のM&A 過去最多件数に

 

2018年、食品業界においては、国内で158件のM&Aが実施された(公表ベース、in-in・in-outのみ、out-inは除く。MARRより)。この件数は、 2017年の138件を超えて、過去最多を更新した。リーマンショック後、88件まで落ち込んだ食品業界M&Aの件数は、2012年以降順調に増え続け、2019年も引き続き増加傾向が続くことが予想される。

 

業態別に見ていくと、食品製造業で約38%、飲食業で約25%、食品卸売業で約23%、食品小売業で約14%となっており、2017年から引き続き、食品製造業が最も高い割合を占めている。傾向として、業態を跨いだM&Aが増えており、問屋の中抜きや卸の外食進出、6次産業化などによる業界の垣根をなくす動きがM&Aに大きく表れている。

 

ここからは、2018年の食品業界M&Aの3つの特徴について順に解説する。

①老舗の伝統を後世に残す、事業承継型M&Aが進化
②食のファッション化とM&A
③投資ファンドによる食品企業への進出加速

 

 

①老舗の伝統を後世に残す、事業承継型M&Aが進化

 

日本国内には、創業100年を超える老舗企業が約27,000社あると言われている。それらの企業の中には、その地域の文化の発展に貢献し、非常に重要な役割を担ってきた会社も少なくない。

 

しかし、昨今の後継者不足による休廃業の波は、同じく老舗企業にも襲い掛かってきており、2017年は廃業・清算件数が過去最高を記録した。2015年3月には、国内約30%のシェアを誇り海外でも多くの愛用者を持つ1932年創業のチョークメーカー、羽衣文具が後継者不在及び代表の体調不良を理由に廃業している。

 

休廃業企業の増加は、それだけ日本の伝統が失われることにもつながるが、2018年は老舗企業の伝統の技や味・文化を後世に残すための進化した承継型M&Aが数多く実行された。

 

練馬区に本店を構え、都内で5店舗を展開する創業1950年の和菓子店、「あわや惣兵衛」は、駅構内などでシュークリームチェーンを展開する洋菓子のヒロタのグループ企業となった。

あわや惣兵衛にとっては、ヒロタが自社工場内に有する和菓子の製造ラインを活用し、生産性の向上を図ることができるほか、商品企画力の増強や人材の補完、共同での店舗開発を実現していくという狙いがあった。ヒロタは本件M&Aにより、自社商品ラインナップの拡充を実施していく。

 

ほかにも創業1866年の老舗酒造事業者であり、山形県で全国的に有名な「沖正宗」を製造する浜田は、関西圏で不動産賃貸事業を中心にワイナリーやホテル・レストランなどを子会社に持つレゾンディレクションの子会社となった。

レゾンディレクションは、様々な食に関するグループ企業を傘下に保有しており、相互発展を目標に、国内トップクラスの知名度を誇る浜田より株式を譲り受け、浜田の150年の伝統を守った。

 

M&Aが老舗企業の存続と発展を実現する非常に有効な手段ということは、徐々に世の中に認知されてきているが、そのきっかけとなったのは2014年に実施されたなだ万とアサヒグループHDのM&Aであったと言えよう。

なだ万は言わずと知れた日本屈指の老舗料亭であり、その起源は江戸時代にまで遡る。

アサヒグループHDはなだ万を取得することで、高級料亭の経営手法を獲得し、自社の顧客である飲食企業に提供すると共に、なだ万が持つ海外展開のノウハウをも獲得した。各種メディアにおいては、組み合わせの意外性から驚きの声が方々からあがるとと共に、老舗企業のあり方を大きく変えるM&Aとして、大きく取り上げられた。

 

今後も、後継者不在で継続困難な状況に陥る企業は増加の一途を辿るばかりであり、それらの企業を存続させて、伝統と文化、技術や味を後世に残すためのM&Aも増えていくだろう。(次回へ続く)

 

日本M&Aセンター 業界再編部 食品業界責任者 江藤恭輔

 

 

老舗企業も事業承継・成長戦略のためにM&Aを選択