M&A全般業界再編食品・外食

2018年の食品業界のM&A動向まとめ

1.食品製造業界

食品製造業界における2018年のM&Aを総括すると、3つの傾向があります。

・後継者不在により老舗企業のM&Aが増加
・大手食品製造会社は積極的に海外投資を続行
・更なる企業の発展を目指しファンドと組む事例が増加

 

2018年5月28日の日経新聞朝刊では、2017年度に倒産、休業した企業数が過去最多に上った背景は「経営者の高齢化と後継者不足」であり、さらに廃業予定の中小企業の3割が「他社と比べて業績が良い」と答えているという調査結果が報告されています。それを受け、老舗企業を含めた中小企業の事業を存続させるための動きが活発になってきており、食品製造業界においても2018年のトレンドの1つとなりました。

 

2018年の老舗M&A事例:譲受×譲渡

・セントラルグループ × イヅツみそ(1931年創業)
・西原商会 × 五島製麺(1948年創業)
・長州産業 × 児玉酒造(1871年創業)
・洋菓子のヒロタ × あわ家惣兵衛(1950年創業)
・レゾンディレクション × 浜田(1866年創業)
・田中電機工業 × 平安堂梅坪(1918年創業)
・オーミケンシ × 宇美フーズ(1919年創業)

 

また、大手食品製造会社は内需の減少への対策として、積極的な海外投資を行っており、リーマンショック以降、一時的に投資を控えていましたが、景気向上と共に積極的に海外への再投資を行っています。

 

2018年の大手M&A事例:譲受×譲渡

・江崎グリコ × チョー・ベンチャーズ(米)
・ニュートリション エ サンテ(大塚製薬の欧州子会社) × ビーシーバイオ(仏)
・不二製油グループ本社 × インダストリアル・フード・サービス(豪)
・キリンホールディングス、三井物産 × ソーンリサーチ(米)
・インディアナ・パッカーズ(三菱商事子会社)×スペシャルティフーズグループ(米)

 

更には、近年更なる企業の発展を目指し、ファンドと組むことで追加投資や、経営管理体制の強化を実現している事例が増えています。日本M&Aセンターも日本政策銀行とともに中堅・中小企業のためのファンド運営会社「日本投資ファンド」を立ち上げ、2018年には2件の菓子製造販売案件への投資を行いました。

 

2018年の日本投資ファンドM&A事例:譲受×譲渡

・日本投資ファンド × たくみやホールディングス
・日本投資ファンド × フジバンビグループ

 

2.食品卸業界

 

食品卸業界における2018年のM&Aは、これまでと同様に同業同士での規模の拡大を図るM&Aが多く見られました。国内の市場が縮小し、流通のためのコストも上昇しているなかで、双方の持つ流通網や販路を活かし、お互いに発展を目指していく業界再編が引き続き進んでいます。

 

2018年の食品卸M&A事例:譲受×譲渡

・ヤマエ久野 × TATUSMI
・西原商会 × 上新トレーディング
・オーディーエー × 関東食材
・九州産交リテール × 肥後リカー
・東洋商事 × 光和
・GRN(双爽グループ) × リラックス
・トーホー × 昭和物産
・エンド商事 × 峰松

 

3.食品小売業界

 

これまでコンビニ業界を筆頭に再編が進んできた食品小売業界でありましたが、2016年にユニーグループHDとファミリーマートが合併して、ユニー・ファミリーマートHDが誕生し、コンビニ業界再編の中でファミリーマート傘下にユニーのサークルK・サンクスが加わったことで再編がひと段落しました。

一方で、イオンの1強独占にある食品スーパー業界においては、一強独占に待ったをかけるべく食品スーパー上位ランカーによるM&A攻勢が引き続き継続しております。

また、先述のユニーが運営する総合スーパー部門に関しては苦戦が続いていたことから、2017年に総合スーパーの再生に実績のあるドン・キホーテが40%の株式を取得することで再生を図っており、2018年には100%株式を取得するに至りました。

このように、各社が強い地盤を持つエリアや、高い専門性のある分野における選択と集中が起きているのも食品小売業界のトレンドといえます。

 

2018年の食品小売M&A事例:譲受×譲渡

・イズミ × イトーヨーカ堂(広島県福山市の1店舗切り離し)
・イズミ × 合同会社西友(山口県と兵庫県で合わせて2店舗切り離し)
・バローHD × フタバヤ(滋賀県で3店舗。譲受企業は滋賀で14店舗)
・マエダ × みなとや(青森県で9店舗。譲受企業は青森で30店舗)
・大黒流通チェーン × マルフジ(東京都で9店舗。譲受企業は都内を強化)

 

4.外食業界

 

外食業界は市場の縮小に加え、人材確保の難しさや働き方改革への対応、仕入や物流の高騰、FC店などの場合ではオーナーの高齢化による店舗修繕の遅れなど、様々な課題を抱える中で、解決策としてM&Aが数多く活用されています。

 

外食業界における2018年のM&Aを総括すると以下の4つのケースが増えています。

■老舗企業が後継者不在によって後世に味を残すための手段として、より大手企業とのM&Aを行うケース

■各社の保有するブランドを増やしていくポートフォリオ経営を推し進めるケース
同業種で異なるブランドを持ち単一食材を活用することで仕入や配送コストを圧縮するM&Aや、幅広い客層へのリーチや、狂牛病・鶏インフルエンザなど様々なリスクに備えて複数の食材に幅を広げるM&Aなど手法は様々

■成長企業が「30店舗の”崖”」を前に、より大手の傘下に入ることで成長速度を加速させるためにM&Aを活用する成長戦略型のケース

※30店舗の”崖”とは、飲食店は30店舗を超えたあたりから「管理面」「組織体制」「社内ルール整備」など内部管理体制を強化する必然性があらわれること

■縮小する国内市場だけではなく、更なる成長を目指して海外展開を強化していく手段としてM&Aを活用するケース

 

老舗企業のM&Aは、いわゆる「2012年問題」の前後から徐々に増えてきました。2012年問題とは、団塊世代(1947年生まれ〜1949年生まれ)が引退年齢である65歳を迎 え始める一方で後継者が不在であることから、事業承継問題が深刻化し始める問題のことを指します。2008年には井筒まい泉がサントリーの傘下に入りました。後継者不在だけではなく、この時期は2009年のリーマンショックなど市場環境の変化など様々な要因はございましたが、2010年には高級フレンチの先駆けとされるシェ松尾が髙瀬物産の関連会社であるホーコーフーズ傘下に加わり、2014年には老舗料亭のなだ万がアサヒビールの傘下に入りました。

 

2018年の外食老舗M&A事例:譲受×譲渡

・鮒忠 × 草津亭(1872年創業の老舗料亭。事業譲渡)
・クリエイト・レストランツHD × はしもと(1968年創業。札幌など10店舗)

 

また、外食産業の最大手であるゼンショーHDをはじめ、外食大手では積極的なM&Aによるポートフォリオ経営を加速させています。

例えば、ゼンショーは2000年には売上170億円でしたが、売上330億円のココスジャパンをM&Aにより傘下に加えました。また2005年には、なか卯を傘下に加えるなど、現在では国内の外食事業だけで20ブランドを有するまでに拡大してきました。

近年では、海外への進出に力を入れている大手企業も多いですが、国内におけるポートフォリオ経営も引き続き拡大していくものと思われます。

 

2018年の外食大手M&A事例:譲受×譲渡

・クリエイト・レストランツHD × ルートナインジー(東京都内2店舗)
・クリエイト・レストランツHD × クリエイト・ベイサイド(オリエンタルランド孫会社。レストラン9店舗、フードコート8ブース)
・ガーデン × TERAKAZUエンタープライズ(千葉・茨城にてラーメン店6店舗)
・ガーデン × らしく(国内外で飲食店5店舗)
・ジー・テイスト × タケモトフーズ(フードコート店、レストラン、カフェ展開)
・ジー・テイスト × 湯佐和(13店舗のうち3店舗の切り離し)
・サブライム(90ブランドを展開) × 牛の達人(都内5店舗の焼肉店を展開)
・エー・ピーカンパニー × リアルテイスト(関東を中心に串揚げなど13店舗)
・ホットランド × アイテム(お好み焼き飲食店を首都圏に14店舗)
・やまや、チムニー × つぼ八(日鉄住金物産からの切り離し。241店舗運営)

 

更に近年では、2017年に日本M&Aセンターで仲介させていただいたトリドールHDと立ち飲み居酒屋「晩杯屋」を25店舗展開していたアクティブソースのM&A、同じくトリドールHDと姫路豚骨ラーメン「ずんどう屋」を30店舗展開していたZUNDのM&Aなど、30店舗前後の店舗数まで自力出店されたうえで大手の傘下に加わるケースが増大しております。飲食店は30店舗を超えたあたりから「管理面」「組織体制」「社内ルール整備」など内部管理体制を強化する必然性が出てくることに起因しており、「30店舗の“崖”」と呼ばれております。この崖を大手とのM&Aをはじめ、どのように乗り越えていくかが外食企業の成長に重要です。

 

2018年の30店舗前後のM&A事例:譲受×譲渡

・ユニゾン・キャピタルグループ × 資さん(うどん店。北九州を中心に42店舗)
・ジー・テイスト × 壁の穴(関東・関西を中心に29店舗展開)
・日本協創投資 × コンプリート・サークル(広島・東京・九州を中心に29店舗)

 

また、大手は国内でのポートフォリオ経営を加速する一方、海外進出も強化しており、特定の地域に集中したM&Aを積極的に行っています。

 

2018年の大型海外M&A事例:譲受×譲渡

・ゼンショーHD × アドバンスド・フレッシュ・コンセプツ(米)
※譲渡企業は米国の持ち帰り寿司チェーン最大手。米国で約3700店舗、カナダとオーストラリアを合わせると4000店舗超を主にフランチャイズで展開しています。

 

日本M&Aセンター 業界再編部 食品業界責任者 江藤恭輔