調剤薬局

4月2日通知から読み解く2020年改定-薬局としての真価を問う‐

調剤薬局業界に衝撃を与えた「4月2日通知」

薬局経営者ならだれもが頭を悩ませているだろう報酬改定だが、前回の2018年4月の報酬改定は大手調剤チェーン狙い撃ちと言われ、グループの処方箋受付回数と集中率でそれぞれバーを定め調剤基本料を大きく減点させた内容であった。

 

次回2020年の改定はどのような内容となるのか、今までの動向や4月2日に出された通知などから読み解いてみたい。

 

2018年4月改定は薬局のサービスの中心を対物業務から対人業務へと移行させる誘導策として大きな影響を及ぼした改定といえる。特に大型調剤チェーンは大きな影響を受け、先日発表があった各社の決算からはその厳しさがうかがえる。

 

そんな中4月2日に厚生労働省から「調剤業務のあり方について」と題された通知が発表された。

 

この通知の中で今まではグレーとされていた薬剤師以外の者が薬のピッキング業務を行うことを明確に認めている。「薬剤師の仕事は対物ではなく対人に重きをおけ」と国から言われているようなものである。ではなぜ2019年4月というタイミングでこのような通知が厚生労働省からわざわざ出されたのか。

 

通知により人繰りが改善するのか

業界に大きなインパクトを与えたこの通知を受け、薬局チェーン各社は人材配置の見直しや薬剤師以外の職員への研修実施などの対策を行っている。

 

そもそも各自治体により解釈が違ったこともあり、あまり大きな声では言えないが昔から事務やスタッフにピッキング業務をやらせていた薬局も中にはあったかもしれない。

 

しかし明確に調剤テクニシャンやアシスタントによるピッキング業務が認められたことにより、薬剤師の人繰りは以前よりは大きく改善することが容易に考えられる。

 

さらに通知以前からしっかりとコンプライアンスを守り、必要な薬剤師を各店舗に配置していた薬局はこの通知を機に大きく対人業務中心のサービスへと舵を切ることが可能となった。

 

もちろん以前からピッキング業務になれている事務がいる薬局の方が短期的に見れば恩恵を受けるかもしれない。しかし薬剤師をきっちりと配置していた薬局は事務のピッキングによってできた余裕で積極的に対人サービスへ力を注ぐことができることとなる。

 

実際に人件費を抑えるのは厳しいか

またこの通知により薬局経営における一番の課題でもあった薬剤師の確保と高騰する薬剤師の人件費の問題について、ある程度改善の兆しが見えることになるとも言われている。

 

もちろん全国的な人手不足やそれに伴う人件費の高騰の波は避けられないが、調剤アシスタント等の活用により今までよりは人繰りについて融通が利くようになるだろう。

 

さらに薬局経営を圧迫していた人件費についても、以前より余裕が出てきたという経営者も少なくない。

 

しかし今まで調剤事務の仕事しかやっていなかった事務がすぐに戦力になることを懐疑的に思う経営者も多く、実際には人件費は簡単には下げられないとも考えられる。

 

一方で国は人件費が下がる想定し、調剤料などの引き下げが行われる可能性が高い。多くの経営者はこの通知を受け、次回の報酬改定では容赦ない減算が行われるのではないかと予測しているのだ。

大手狙い撃ちだった前回の改定

報酬改定については今後の改定で薬局にとってプラスとなるような事態は想定しづらいといわれている。国の財政制度を考えると、低負担高福祉といわれている今の社会保障制度を維持するのは困難であり、国費で賄われる調剤報酬についての枠も今後はどんどん小さくなっていくことが予想される。

 

現在6万軒ある薬局を3万軒程度に減らすというのは誰もが聞いたことがあるはずだ。

 

前回の改定では大手調剤チェーンが主なターゲットとなり、目立ちすぎたための薬局バッシングであるといった声が多く聞かれた。

 

そのような側面もあるだろうが国や財務省としては今後の社会保障費の抑制といった面だけで見ると、大手の店舗だろうが1店舗の薬局だろうがどちらが今後の3万軒に残るのかは大した問題ではない。

 

ではなぜ先の改定では大手チェーンだけ厳しかったのか。その一つの理由に人件費の問題がある。

 

大手と中小では圧倒的に差がある人件費

財務省が社会保障費等の予算を決める際に参考にしている資料に医療経済実態調査という調査がある。病院や診療所、歯科、薬局の経営について国が無作為に調査した報告書である。そのなかで薬局の経営について調査された項目の中で興味深い点があった。

 

それは店舗数別の損益状況という題でまとめられた項目である。同一法人が行っている店舗数が1店舗、2~5店舗、6~19店舗、20店舗以上といった法人の規模別に調査された店舗の収益がまとめられている。

 

この統計の中で同じ薬局を営んでいるにもかかわらず、対売上の構成比率で項目別に明らかに数字が異なる数値があった。給与費等でまとめられていた人件費である。

 

1店舗の薬局は売上に対し給与費が21.6%を占めるのに対し、20店舗以上だと13.4%となっている。

 

1店舗では社長が管理薬剤師をしているケースがあるため給与費が高くなってしまうのは理解できるが、そのほかの店舗数と比べても20店舗以上の薬局は5%以上給与費が低くなっている。

 

これほどまでにチェーン薬局と個店とでは人件費に差があったことになる。

 

報酬改定に話を戻すと国や財務省が限られた社会保障費の中で調剤報酬を減らすのはやむを得ずと判断し、比較的余裕があった(またはあるように見えた)大手・大型チェーンにメスを入れたことは容易に想像がつく。

 

もちろんそれ以外の理由もあるだろうが、少なくとも財務省や厚生労働省が医療経済実態調査の統計から報酬改定の示唆を得ていることは確かだろう。

薬局として生き残れるか、明暗が分かれる次回の改定

このことから先ほどの4月2日通知と翌年の次回の報酬改定を考えると、報酬改定のメスが大手チェーンだけに入れられるというのは想像しづらい。むしろ対物業務への点数は今回の通知を機に会社の規模を問わず大きく減点され、対人業務の点数が大きく加算される可能性の方が高いともいえる。

 

そうなったときには大きく対人業務に舵をきれた薬局にとってはプラス改定となるが、そうでない薬局にとってはかなり厳しい改定となるだろう。

 

前回の改定のように会社の規模や集中率といった基準とは違う、今後国に必要とされる薬局かどうかという究極な基準が適用される可能性が高い。いずれにしてもこれからの薬局を取り巻く様々な状況には引き続き目を離せずにはいられない。

 

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業界再編部 河田 航佑

埼玉県浦和区出身。慶応義塾大学経済学部卒業後、日本M&Aセンターに入社。入社以来、調剤薬局専門チームにて調剤薬局業界の再編に取り組む。主に関東圏の調剤薬局を担当し、M&Aによる成長戦略・事業承継をサポートしている。