調剤薬局

調剤薬局業界再編M&Aの歴史

調剤薬局業界のこれまでの十年間はまさに激動のM&A時代であったといっても過言ではないでしょう。

 

ご存知の通り、約59,000軒ある調剤薬局は既に飽和状態を迎えており、新規出店も簡単にはできない環境下、各社ともシェアを増やすためにはM&Aという戦略をとらざるを得なくなってしまっています。

 

ここで、十年前から調剤薬局業界のM&Aを振り返ってみます。

 

「激動のM&A時代の幕開け。大手中心にM&Aが必要な経営戦略へ」

時期

主要M&A件数

特徴

2008年

9件

大手医薬品卸が積極的な川下展開を開始

2009年

19件

ファーマライズが再編をリード

2010年

16件

年商20億円クラスの中堅薬局の売却が相次ぐ

2011年

13件

ドラッグストアが調剤薬局を本格買収

2012年

18件

メディカルシステムネットワークが再編をリード

2013年

23件

上場企業同士のM&Aが成立

2014年

16件

地方中堅薬局の売却が加速

2015年

 

アインホールディングスが再編をリード

2016年

 

年商100億円クラスの地方薬局の売却が相次ぐ

2017年

 

鈴木薬局、アポテック等地域No.1が次々売却

2018年

 

大分県No.1の永冨調剤薬局が売却し、九州に激震

 

 

2008年、東邦薬品は全快堂グループ(新潟県、40店舗、28億円)を、アルフレッサHDはアポロメディカル(東京都、47店舗、93億円)を、スズケンがファーコス(東京都、96店舗、154億円)を買収し、医薬品卸が積極的に調剤薬局を傘下に収めました。

 

2009年はファーマライズが立て続けに5件M&Aを実行し、その年をリードします。

 

2010年には東邦HDがメディカルブレーン(福岡県、18店舗、16億円)を、クオールがティオーファーマシーグループ(中四国地方、25店舗、29億円)を、さらには日本調剤がアイケイファーマシー(北関東、5店舗、37億円)で買収するなど、年商20億円クラスの売却が相次ぎ業界再編が新たなステージに移りました。

 

その後ドラッグストア業界が積極的に調剤薬局に参入し、2012年には10店舗以上の買収案件が複数出現。一気に再編が加速することになります。

 

ついには2013年にトータルメディカルサービス(JQ)、オストジャパン(札証)がTOBされるなど、上場企業同士のM&Aが起こり業界をにぎわせました。

 

これにより一気に再編のスピードは加速し、その翌年から地方でトップクラスの薬局が相次いで売却の選択をとるようになりました。

 

2016年には共栄堂(新潟県)、葵調剤(宮城県)、みよの台薬局(関東)など、年商100億円クラスの企業が立て続けに売却に動いています。

 

その後2017年、2018年においても大分県の永冨調剤を始め、いわゆる地域でNo.1の薬局が大手と手を組む選択をしており、その件数は増加する一方です。

 

こうして振り返ってみると、まずは譲渡企業の規模感の変化が注目されます。10億円以下のサイズが多かった時代から、10億円、20億円、30億円、50億円、100億円と、徐々に大きくなっていくのが分かります。

 

また、譲渡理由も単なる後継者不在やオーナーの高齢化によるいわゆる事業承継型の理由ではなく、より企業を発展させたい、そのために大手の力を借りたいというように、成長戦略型の譲渡理由が増えてきているのも確かです。

 

そうした譲渡側のニーズが増えることと同時に、譲受け側も必死な状況です。前述の通り、新規出店が叶わず、どういった方法でより地域で発言力をもち、なくてはならない存在、ブランド力をつけていくかと言うと、やはり店舗数を増やすことになります。

 

大手10社を集めてもシェアはまだ18%程度であるため、これからもより多くの譲受けニーズが出てくるでしょう。

 

「条件のピークは過ぎ去った!M&Aニーズのめまぐるしい変化の波」

 

この10年M&Aが非常に盛んに行われてきたといっても、全ての企業が順風満帆ではありませんでした。下記の図をご覧ください。

 

M&Aが激化して、譲渡企業が譲渡したいと思えば、いつでも譲受け企業が出てきた時代は2012年~2015年あたりまででした。

 

エリア、売上規模をそれほど問われず、大手企業も積極的に店舗数を増やそうとしていた時代ですので、かなりの好条件で譲受け企業が見つかっていました。

 

しかし、いわゆるマイナス改定となってからは非常に厳しい見方に変わってきています。調剤基本料が処方箋回数や集中率等に大きく関係してくることにもなり、その報酬基準が運営している企業の規模によって全く異なるという現象が起きてしまっています。

 

そのため2016年頃から、エリアや規模、集中率等の内容がかなり精査されるようになり、2018年頃からは譲渡したくても候補先が見つからないというケースも出てきました。

 

まさにM&Aはタイミングが大切といわれますが、まさにその通りの状況です。近い業種ではドラッグストアは既に同じ道をたどっており、現在では地域の10店舗程度の薬屋さんなどはM&Aでの譲り受けの対象にすらなっていません。

 

今後は調剤薬局も譲り受ける対象の規模が徐々に大きくなっていき、ゆくゆくは地域でNo.1クラスの企業しか譲渡できないという時代も来ることでしょう。

 

 

 

10年前に現在の調剤薬局業界の状況を想像できた方は、おそらくいないのではないでしょうか。

 

しかし、IT化や異業種の参入・国の方針の転換等々、業界の変化のスピードは非常に早く、この流れは止まりません。

 

今後の動向もしっかりと見極めた上で、経営判断をしていかなければなりません。