調剤薬局

【調剤薬局業界M&A事例】3代目の老舗だからこそ株をきっちり把握する

【譲渡企業様】

企業名

A社

業種

調剤薬局

売上(M&A当時)

12億円

オーナー様のご年齢

58歳

 

【譲受企業様】

企業名

大手調剤X社

業種

調剤薬局

売上(M&A当時)

600億円

   

 

東北で10店舗以上ドミナントしていた3代目社長が譲渡を決めた理由

 

3代目58歳、息子と娘は薬剤師

 

私が3年前に譲渡をお手伝いしたA社のことです。その市町村では知らぬ人はいない名門の3代目で、息子は東京の病院の勤務薬剤師、娘は自社の薬剤師として勤務しており、社長も50代と若く、後継者候補もいることから、今すぐ譲渡しなければいけない理由はありませんでした。

 

 

薬剤師不足で地域の需要に応えられない

 

しかし、そんなオーナーには悩みがありました。薬剤師不足です。

 

地域の病院勤務医に、駅前で独立したいので一緒に開局してくれないかと依頼を受けておりました。勤務医は、若く、人柄もよく、クリニックを開けば、地域住民は喜んでそこにいくと思われました。

 

しかし、東北でも仙台・盛岡を除けば、薬剤師が不足しています。A社のような地域の名門であろうと、そう簡単に採用はできません。

 

店舗を出店し成長することは、従業員に夢を与え、さらに優秀な人材を引き寄せることができます。地域医療の担い手としても、ドクターと住民の期待に応えたい。そんな葛藤がありました。

 

 

在宅、かかりつけ、ITシステム。利益は減少予測なのに、投資のための借入金の負荷は大きい。

 

また、現在は順風満帆な経営をしていたA社ですが、将来には不安がありました。

 

前年に厚生労働省より発表された、患者のための薬局ビジョンには、在宅調剤の対応、門前からかかりつけへの移行、ITシステムの導入という、時間・人・資金のいずれにおいても大きな先行投資を要する薬局の未来が示されていました。

 

年商10数億円の自社単体でシステム導入しても、果たして100倍以上の規模がある大手調剤と同じクオリティを提供できるのか。あるいは今後薬価も技術料も縮小する中で、それだけの投資をして、孫の代に残したのは借入金だけといったことにはならないだろうか。

投資をするにあたって、決断には迷いがありました。

 

 

30年先も存続させるために

 

私がオーナーからお話をお伺いしたときには、もう資本提携のお相手が浮かんでいました。大手調剤薬局のX社です。

 

大手調剤でありながら、M&A後も「地域のことは地域のオーナーが一番よくわかっている」という考えから、法人も看板も維持し、さらに元オーナーに経営を任せることで積極的にM&Aを行っています。

 

 

さらに、このX社には東北で拠点となる法人がなかったため、もしA社がグループに入れば、大手調剤の東北地方の中核会社として、それまで以上に成長することができると考えたのです。

 

 

オーナーの決断を後押ししたのは、30年後もA社を存続し、発展させていくためには、自分がオーナーであることにこだわる必要はないという想いでした。

 

 

実際、グループ入りした後は、大手調剤X社の東北地方での新規出店やM&Aの話があると、A社の店舗として出店され、譲渡後に店舗数は3店舗ほど増え、会社として成長することができています。

 

 

本件M&Aで重要なポイント

 

法務:3代目の老舗だからこそ株をきっちり把握する

 

本件では大きく2つが他の事例と異なることがありました。

 

1つ目は、株です。創業者は現オーナーの祖父ですが、50年以上前ということもあり、株の変遷が一部不明瞭になっていました。結局、私もご自宅にお邪魔し、なくなったお父様の部屋をくまなく探すと、当時の株式の相続の証拠がでてきて、無事クロージングを迎えました。

 

株式は、売買対象そのものであるため、安易に契約書の表明保証で調整するということができません。親族でも、第三者への承継でも、必ず株式については、整理しておくポイントになります。

 

 

財務:純資産より売買価額が低い?

 

2つ目は、決算書上に記載されている純資産の金額より株式譲渡対価が小さくなり、顧問税理士から指摘をうけました。なぜでしょうか?

 

それは、地方の薬局は土地を自社で所有していることが多く、さらに当社の場合それが20年ほど前の売買価額のまま帳簿に記載されていたため、現在の時価に換算すると、それらが1/4~ほぼゼロ価値となってしまうため、そのような誤解が生まれてしまったのです。

 

顧問税理士の先生からすると、M&Aで顧問先が譲渡されると顧問契約が打ち切られてしまう、というリスクから、どちらかというとM&A自体に反対目線で見られてしまうことがあるのです。

しかし最近ではM&Aに関する知識の普及が進み、積極的にコンサルティングを行っている先生方も増えています。

 

日本M&Aセンター・業界再編部 小林大河

業界再編部 課長 調剤薬局業界支援室

小林 大河

早稲田大学国際教養学部卒業後、日本M&Aセンターに入社し、業界特化事業部の立ち上げに参画。2018年度日本M&Aセンターのトップセールスとなり、最優秀営業社員賞を受賞。代表的な成約案件である大分県No1の永冨調剤薬局の他、東北地方の地域No1薬局、北関東地方の地域No1薬局等の成約実績がある。

共著:業界再編時代のM&A戦略(2015年Amazon1位※)、業界メガ再編で変わる10年後の日本(2017年Amazon1位※)
メディア掲載(抜粋):週刊粧業2月22日号表1面 https://www.syogyo.jp/news/2019/02/post_023495
社長名鑑 期待の若手 https://shachomeikan.jp/article/1856

早稲田大学国際教養学部卒業後、日本M&Aセンターに入社し、業界特化事業部の立ち上げに参画。2018年度日本M&Aセンターのトップセールスとなり、最優秀営業社員賞を受賞。代表的な成約案件である大分県No1の永冨調剤薬局の他、東北地方の地域No1薬局、北関東地方の地域No1薬局等の成約実績がある。

共著:業界再編時代のM&A戦略(2015年Amazon1位※)、業界メガ再編で変わる10年後の日本(2017年Amazon1位※)
メディア掲載(抜粋):週刊粧業2月22日号表1面 https://www.syogyo.jp/news/2019/02/post_023495
社長名鑑 期待の若手 https://shachomeikan.jp/article/1856