住宅・不動産・設備工事業界

不動産業のM&A事例(2)-1  小規模でもM&Aできる?地方の40代の社長の決断

M&Aで会社の譲渡を検討されるオーナーの中には、「規模の点から自社がM&Aの対象にならないのでは」と懸念される方が多くいらっしゃいます。確かに一定の規模がある企業の方が相手先を見つかりやすいのですが、規模が小さいからM&Aができないということはありません。

当社の成約実績においても年商1億円前後の企業のM&Aは毎年多数成立しています。年商数千万円の企業がM&A成約した事例もございます。規模に関係なく、その会社に何かしらの魅力を見出してもらえる相手先を見つけることができれば成約に至るのです。多くの会社にとっては魅力を感じられない会社も、ある会社にとっては喉から手が出るほどほしい会社だった、ということもあるものです。ただ、そういう会社は黙って待っていても現れないので、どのような会社ならば相乗効果が生まれそうか検討・提案し、引き合わせることは、当社の腕の見せ所となります。

前回は、後継者問題を抱えたオーナー企業が、成長中の上場会社へ譲渡をした事例をご紹介しました

今回は、年商1億円で、不動産仲介・管理を営んでいた「町の不動産屋」の事例です。譲渡企業のC社は中部地方のある町で不動産仲介・管理事業を営んでおりました。山田社長(仮称)は大手不動産会社を経て30代で独立し、10年ほどC社を経営してきました。C社は150戸ほどの管理物件を抱え、コンパクトながらも安定した経営をしておりました。山田社長も少なくない役員報酬を得ており、個人としても安定した生活を送っていましたが、会社が軌道に乗り安定してきてからは事業拡大意欲が減退したことから、M&Aで譲渡を決断することとなりました。

 

M&Aをする上で、譲れないことは何か?

企業評価の実施や企業概要書作成を終え、各候補先企業に提案を進めていくにあたり、譲渡企業のオーナーの希望条件・優先順位を明確にしていきます。相手先の規模・社格・経営ビジョン、条件、スケジュールなどの要素があります。山田社長は将来、新しい事業を始めることも視野に入れており、そのための元手をM&Aで得ようと考えていました。40代と若いことで時間的余裕があったため、譲渡価額が最優先事項となりました。

 

相手先の探索。小規模でも収益を上げていたことから、複数社が高い関心

地域展開を進めている大手・中堅の不動産会社、ストック事業の獲得を狙う建設・建築会社、多角化を進めている製造業・サービス業など、多くの会社をリストアップし、山田社長に提案しました。小規模だから相手先が見つからないということはなく、しっかりとした基盤を築いていており安定した収益を上げていたことから、複数の企業が高い関心を示しました。しかし、地域的な部分がネックになりました。

この地域は都市部から離れており、中長期的に人口が増える見通しがありません。そのため、各相手先企業からの提示された条件はいずれも山田社長の希望からは乖離するものでした。

 

新事業をスピーディに立ち上げたい地域コングロマリットが候補に

そのような中、地域のコングロマリットであるD社が手を上げました。

D社は交通事業を本業とし、地域のコングロマリット企業として、不動産事業や生活サービス事業など多くの事業を営んでいました。それらの事業を拡大する中で、ゼロから始めた事業は、失敗で終わるものや利益が出るようになるまで長い年月がかかることが多かったため、M&Aに着目するようになりました。新しい事業をスピーディーに立ち上げたいD社とってM&Aは最良の手法であったのです。事業エリアを限定しているD社にとっては、地域内で小規模ながらも強固な基盤を持っているC社は、大変魅力に映りました。

 

しかし残念ながら、そのままスムーズに成約とはいきませんでした。山田社長はどのような決断をしたのか?交渉の過程については、次回お伝えします。

 

※本連載は、2016年11月~2017年4月に全国賃貸住宅新聞にて連載した記事を転載したものです