食品・外食

ビール・飲料業界再編M&Aの歴史

業界の動向について

国内市場は縮小気味、大手各社は海外に活路を見出す

 

人々の生活に強く根付く、清涼飲料やビール・ウイスキーなどのアルコール飲料。その需要は永久に絶えることが無いように思われますが、国内市場に目を向けると、少子高齢化に伴う人口減少・若者のアルコール離れに伴い、飲料業界全体は縮小傾向にあるといわれています。

 

もっとも、多様化するニーズに対する各社の競争激化により、清涼飲料業界全体では利益率は2.0%(2017年から2018年)(参考:業界動向サーチ「清涼飲料業界」)ほどの伸びは見られたものの、大手各社はさらなる売上拡大の活路をアジアを中心とする海外に見出しています。

 

国内外で大型メーカー間のM&Aが盛んに

 

市場の飽和に反して、国内では大小含め多数の飲料メーカーがひしめく状態となっており、競争は激化しています。その中、大手各社の間では業界再編の動きが活発になってきました。

 

世界的には、アンハイザー・ブッシュ・インベブによる、英SABミラーの巨額買収(2015年、買収額約13兆円)が行われたのは記憶に新しい事例です。

 

ビール会社各社の昨今のM&A

 

アサヒホールディングスは2014年創業180年以上の歴史ある料亭「なだ万」をグループ傘下に。2016年にビールブランド「ペローニ」(イタリア)や「グロールシュ」(オランダ)、「ピルスナー・ウルケル」(チェコ)、「ティスキエ」(ポーランド)、「ドレハー」(ハンガリー)など東欧5か国ビール事業8900億で買収しています。同じく2016年アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)から西欧事業を、17年には中東事業を約1兆2000億円を投じて買収しました。

 

サントリーホールディングスは2014年にウイスキー「ジムビーム」で知られるアメリカの蒸留酒大手ビームを買収しました。買収金額は約1兆6500億円で、売上高のおよそ半分相当を投じる大型買収でした。2015年にはJTの飲料ブランド・自販機事業等を1500億円で買収しております。

 

キリンホールディングスはビールに関して、2009年にオーストラリアのライオンネイサンを3300億円で完全子会社化し、2011年にはブラジルのスキンカリオールを3000億円で買収。2015年にはミャンマーのミャンマー・ブルワリーを697億円で買収。2017年にはスキンカリオールをハイネケンへ売却しています。

 

サッポロホールディングスは、2006年に306億円で買収したカナダのスリーマンが海外事業の柱で、ベトナムに進出して2011年、ホーチミン市近くにロンアン工場が竣工しています。

 

2019年は野村HD傘下野村キャピタルがカーライル・グループと共同でオリオンビールを約570億円で買収しております。

 

 

業界の歴史と今後のM&Aの行く末

ビール会社の歴史

 

他の業界と比較すると歴史的に早い段階に国内大手4社でほぼ寡占市場のビール業界でありますが、どんな背景があったのかひも解いていきます。

 

麦酒が日本で広がる

 

1870年アメリカ人が横浜の山手にスプリング・ヴァレー・ブルワリー(現キリンビールの前身)麦酒醸造所を建設したことからビール業界の歴史が始まります。

 

同時期、中川清兵衛氏が開拓使麦酒醸造所開業(現サッポロビール前身)、1887年有限会社日本麦酒醸造会社が恵比寿で誕生(エビスビール)、1889年有限会社大阪麦酒会社(現アサヒビール前身)など全国的に小規模な醸造所含めて多くのメーカーが誕生します。

 

一方で1900年ほどには軍備増強のため酒税が重くなり資金力の弱い小醸造所が次々と姿を消していくことで大手の寡占状態になってきます。

 

1906年札幌麦酒、大阪麦酒、日本麦酒の3社が合併し大日本麦酒が誕生し業界72%のシェアまで寡占します。このときブルワリーのシェアは20%程度でした。

 

同時期、岩崎家がブルワリー事業を引き継ぐ形で麒麟麦酒株式会社を設立します。

 

戦後から高度経済成長期を経て

 

戦後1949年GHQの指令で過度経済力集中排除法に基づき、大日本麦酒は東日本エリアの日本麦酒(サッポロビール)と西日本エリアの朝日麦酒(アサヒビール)に分断されてしまいます。

 

このころ日本麦酒、朝日麦酒、麒麟麦酒のシェアは33%ずつでした。その後サントリーが1963年ビール事業に参入し、今の4社体制に落ち着くことになりました。

 

ビール業界今後のM&A

 

戦前までは、高級嗜好品であったビールは飲食店でしか飲めませんでした。

 

戦後高度経済成長と合わせて冷蔵庫が家庭に普及するのと合わせてスーパー、コンビニでの小売での展開を行いながら缶ビールの普及がなされ、昨今では第三のビールの争いが活況になってきています。

 

また戦後4社寡占市場になってからはシェア争いの順位の変動はありますが、新規参入してくる企業はおらずここ70年間顔ぶれは変わっておりません。

 

若者のビール、酒離れが叫ばれる昨今日本のビールメーカーは海外のマーケットに打って出るか、ビール以外の事業ドメインの拡充を注力しています。

 

このように再編が進んだ業界では他業種か国外に対するアプローチが盛んにおこなわれております。今後も業界の動向について目が離せません。

 


業界再編部 白鳥 雄飛

1985年、宮城県仙台市生まれ。東京工業大学卒業後、東京大学大学院理学系研究科卒業。㈱リクルートで法人営業に従事した後、㈱日本M&Aセンターへ入社。食品業界の担当として、製造業から卸業、小売業、外食業まで、様々な業態のM&Aによる成長戦略、事業承継支援に取り組む。