食品・外食

2017年・食品業界のM&A

2017年外食・食品業界のM&A総括

2017年度の食品業界のM&A件数は、138件(公表ベース)と、過去10年で最多であった2014年とタイ記録の件数となりました。

 

また2017年特に外食産業のM&A動向を語るうえで、外せないキーワードが2つあります。1つは「ポートフォリオの拡大」、2つ目は「海外進出」です。

 

外食企業が買収を仕掛ける目的は、業態を広げて国内市場を取りに行くか海外のマーケットを開拓するか。その2つが特に目立った年であったといえます。

2017年度の外食・食品業界のM&A一覧

 

 

ポートフォリオ拡大型のM&A

居酒屋の業態開発で業界をけん引していたダイヤモンドダイニングが、9月から持ち株会社体制となり、DDホールディングスとなりました。

 

これは今年の象徴的な出来事と言え、持株会社化することで、子会社の意思決定が迅速になり、リスク分散が可能になります。多様な業態をぶら下げて、ポートフォリオ拡大に動く姿が浮かび上がります。

 

海鮮居酒屋「はなの舞」などを運営するチムニーは、11月にハヤマフーズから7店舗を譲り受けると発表。ハヤマフーズはハンバーグやビーフシチュー等、洋食が強い企業です。

 

ダイニングやカフェ業態を展開するバルニバービは、6月に京都市東山の料理旅館「菊水」の株式を取得。洋風レストラン業態を多く持つ会社が、純和風に手を広げたポートフォリオ経営の例と言えます。昭和30年創業の歴史ある店舗を取得したのは、業態にこだわるバルニバービらしいM&Aでした。

 

「丸亀製麺」を展開するトリドールホールディングスは7月に居酒屋「晩杯屋」を展開するアクティブソースの株式を取得。また11月には関西圏を中心にとんこつラーメン店「ずんどう屋」を展開するZUNDの株式を取得。

 

いずれの案件もトリドールホールディングスが強みとする昼間、ロードサイド大箱という領域から夜間のピークタイム、駅近の路地裏での展開という領域を補完することで時間・不動産のポートフォリオ拡充が実現されました。

 

食品の世界大手ネスレは、米ブルーボトルコーヒーを買収したと9月に発表。買収額は約470億円。ネスレは自社運営する「ネスカフェ」でエスプレッソ型を、ブルーボトルコーヒーでドリップ型コーヒーの消費を伸ばす戦略。こちらもポートフォリオ拡大の戦略が垣間見られます。

 

海外進出型のM&A

 

海外展開を視野に入れたM&Aニュースといえば、スシローと元気寿司の経営統合に向けた動き。米卸大手の神明が9月、英投資ファンド「ペルミラ」からスシローグローバルホールディングスの株式33%を379億円で取得しました。

 

神明はすでに元気寿司を傘下に収めており、神明はスシローと元気寿司の経営を統合し、スシローの海外進出を狙うことが予想される。スシローの海外店舗数は8。今期は2店舗を撤退しています。一方、元気寿司は海外の店舗数が165。直販とフランチャイズを組み合わせて着実に拡大しております。

 

2017年27店舗を出店したスシローは、他店との苛烈な価格競争に巻き込まれること必至です。当時上場したばかりのスシローは、投資家にアピールするための企業戦略を描かなければなかったと考えられます。そのためにも、元気寿司との統合でノウハウを獲得し、海外進出に弾みをつけたかったと想像します。

 

先ほど国内ポートフォリオ拡充を行ったトリドールホールディングスがとった海外戦略は独特でありました。

 

同社は7月に、外食企業に出資をする米投資ファンド「ハーゲット・ハンター」への出資を決定しました。出資することにより、アメリカで成長している外食企業ベンチャーの情報をいち早く入手することを目的としたと考えられます。

 

ハーゲット・ハンターは、人気のチョップドサラダ系飲食店「CHOPT」をいち早く見出し、チェーン展開したことで有名。

 

トリドールは、フランチャイズ化する前の飲食店の芽を刈り取ろうとしている。同社は当時アジア地域で177店舗、アメリカは5店舗。出遅れ気味のアメリカ出店を本格化する狙いがありました。

 

ラーメン店「一風堂」を展開する力の源ホールディングスも、海外展開に力を入れている企業です。同社は6月にインドネシアの飲食企業を2700万円で買収しました。海外で65店舗を運営しており、出店を更に加速するため、当時の出店重要拠点はアメリカでしたが、アジアでの拡大を狙ったものと考えられます。

 

10月には「築地銀だこ」のホットランドも、イオンと共同で出資して設立したL.A.Styleを完全子会社化しました。同社は米The Coffee Bean & Tea Reafの国内フランチャイズ契約を締結していました。

 

以上のように2017年度に関しては国内においてはリスク分散・新業態展開を狙った「ポートフォリオ拡充型」のM&A、また内需が中長期的に見たときには確実にシュリンクしていくことを懸念し「自社ブランドの海外展開型のM&A」というものが多くみられた年であったといえます。

業界再編部 食品業界支援室 室長

江藤 恭輔

1982年12月、宮崎県生まれ。
青山学院大学法学部卒業後、大手金融機関での法人営業を経て2015年に㈱日本M&Aセンターに入社。食品業界を専門として製造業、小売業、外食業などのM&Aに取り組む。17年は「晩杯屋」の㈱アクティブソース、「ラー麺ずんどう屋」を展開する㈱ZUNDのM&Aを手掛けた。

1982年12月、宮崎県生まれ。
青山学院大学法学部卒業後、大手金融機関での法人営業を経て2015年に㈱日本M&Aセンターに入社。食品業界を専門として製造業、小売業、外食業などのM&Aに取り組む。17年は「晩杯屋」の㈱アクティブソース、「ラー麺ずんどう屋」を展開する㈱ZUNDのM&Aを手掛けた。