病院医療・介護

病院経営においてもM&Aは経営戦略の1つとなる

少子高齢と深刻な人口減少により、産業構造の転換に迫られる日本企業。また後継者不足という問題もあり、多くの企業がM&Aを通じた存続と発展に活路を見出そうとしています。医療業界も同様の問題に直面しています。今回は、医療業界M&Aの実態と、ポイントをご紹介します。

 

医療業界においてもM&Aを選択することはある

 

厚生労働省は2025年に向け、病院完結型から地域完結型へと医療・介護の提供体制の変革を進めています。本年度の診療報酬改定では、7対1病床の大幅な削減に向けた、重症度・看護必要度の見直しや在宅復帰率の基準設置など、地域包括ケアシステムを意識した在宅復帰志向が示されました。また11月には病床機能報告制度が締め切られ、病床機能の分化と再編は今後一層進むことが予想されます。診療報酬がプラスになることが期待できない状況にある中で、今後の病院経営について経営者は考えなければなりません。

 

さらに医療界にも他の業界同様に、後継者問題と経営者の高齢化問題があります。例えば無床診療所の90%、有床診療所の80%に後継者が不在であることが分かっています。さらに老朽化した施設の建て替えや、耐震化への対応など医療施設特有の問題もあります。医療提供体制が変わり、診療報酬が下がり続ける現状では、外来中心の診療体制では利益を出すことは難しいと思います。施設の建替え費用や耐震化費用をどうするのか。経営判断の選択肢にM&Aを含める病院経営者が増えています。

 

今後の事業継承対策として、M&Aも選択肢として考える

 

経営者は、本来ならば早い段階で事業継承対策や、後継者の育成・選定を進めておかなければなりません。特に医師が経営者である場合、診療以外の仕事も重なり、これらのことを後回しにせざるを得なかったことは理解できます。しかしこの問題が、高齢化や医療提供体制の変化とともなって現在、多くの病院経営者を悩ませています。また、親と子どもの指向性の違いという病院特有の問題もあります。

 

これは医師のお子さんが医師になることはよくあるケースですが、専門性の違いにより、病院を継がないというケースです。例えば、実家が精神病院を経営しているが、子どもは脳神経外科の専門医だった場合、実家を継ごうとは思わないでしょう。また、現状のような医師不足の状態では、経営者の仕事は診療よりもマネジメントに偏ってしまいます。『経営者になるために医師になったわけではない』と考える子どもも多くいるという現実を踏まえた対応が必要となります。

 

医師が経営者を兼ねていた時代の終息

 

病院経営は、本質的にはサービス業でありながら国庫に頼る収益構造であり、危険なビジネスモデルだということを自覚しなければなりません。加えて病院の廃業による影響は、患者や職員、関係業者にとどまらず、地域社会全体に及びます。経営者は、改定の変動に左右されない収入源をどのように確保するかを考えなければならなくなるでしょう。

 

医療法人は非営利法人ではありつつも、一方では建物・医療機器といった多額の資金を必要とする事業です。医師が経営者を兼ねていた時代は終りを迎えつつあり、最近は一般企業でも『プロ経営者』といった言葉がでてきています。例えばですが、医療法人においても外部から非医師の経営者を招き、企業戦略的な観点や、顧客視点を持った病院経営をすることを考慮してはどうでしょうか。大型の設備投資についても義務だから耐震化をするのではなく、患者やそこで働く医療従事者の安心や快適性を高めるために改修をする、という発想の転換が必要となります。

 

すでに述べたように、現在行われているM&Aは、乗っ取りや身売りなどではなく、譲渡・譲受どちらも満足度の高いものが大半です。特に人集めに苦労している医療機関におけるM&Aでは、リストラや人員整理が行われることはまずありません。医療法人は上場が不可能ですので、子どもや従業員に継承が難しいと判断した場合、『廃業』か『M&Aによる第三者への譲渡』しか選択肢はありません。地域社会への影響を考慮した場合、M&Aが最善の策となるケースは、大いにあるのではないでしょうか。