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M&A前後でのIT企業の経営変化-IT業界M&Aコラム2019③-

IT業界M&Aコラム2019 第3回 ~M&A前後でのIT企業の経営変化~

 

前回は、近年IT業界でM&Aが非常に活発に行われている要因、背景についてお話をさせて頂きました。

 

今回は、実際にIT業界でM&Aをされた企業が、その後実際にどのような発展を遂げたのか、実例に基づきご紹介させていただきます。

 

 

 

上記は、2015年にM&Aを実行した都内のIT企業の実例です。M&A後4年経ち、経営状況がどのように変化をしたのかをまとめています。

 

M&A実行当時は、SES事業が中心で売上の7割を占めていたのですが、現在は、自社サービスや請負開発での売上比率が7割と逆転し、労働集約型からサービス型の企業へと変化しています。ちなみに、こちらの企業の株式の所有者(オーナー)はM&Aで代わりましたが、代表者は今もかわっておりません。

 

M&A前の経営課題 -技術者不足で自転車操業―

 

中小企業のIT経営者は、同じような経営課題を持たれている方が多いのではないしょうか。

 

例えば研究開発については、自社のサービスや製品を持ちたくても、技術者や資金繰りに余裕がなく、開発に十分なリソースが割くことが出来ないというお悩みをよく聞きます。

 

何とか開発が出来ても、マーケティングや営業が得意でなければ、自信ある自社製品・サービスを世の中に広めることはできません。そうすると日々の売上を得るため、必然的にSESや派遣中心のビジネスモデルが定着し、そちらに注力することになります。

 

人材育成についても、近年はセキュリティ上の理由から客先常駐での開発が多くなっていますが、社外での開発が多いと長期での人材育成プランが立て難く、会社への帰属意識も低くなってしまいます。

 

結果として、人材も流動的になり、離職率が高くなりがちです。

 

では新規の採用はどうかというと、多くの中小企業においては、人事や広報を専門に行える人材がいるわけではないため、組織的かつ積極的に採用活動を行うことができる大手企業に優秀な技術者が流れ、経営格差は広がるばかりです。

 

M&A実行後の変化 ―サービス型の企業へ進化し、成長を遂げる―

 

そうした課題を抱えていたIT企業がM&Aを実行したことにより、実際にどのようになったかというと、一番大きかったのが、人材に余裕ができ、創業当時から念願であった自社製品の開発・リリースができたということです。

 

その自社製品を皮切りに、請負で持ち帰りでの仕事の受注を増やすことが出来、社内での人材育成・教育も行いやすくなりました。

 

結果として、そうした教育体制の充実が採用時のアピールにも繋がり、新規採用や人材の定着に繋がるという良い循環が生まれ、売上も4年で8億円から15億円とほぼ倍に成長しています。

 

M&Aで業態を変化させる企業が増加

 

参考までに、下図は企業規模別で見た、2009年と2016年度の元請、下請けの売上高の比較です。

 

 

 

中堅企業はこの間、元請の売上比率を増やし、徐々に下請けから脱却して業態を変化させている一方で、中小企業では依然として二次請け以下の売上が中心となっているのが顕著に分かると思います。

 

この中には、自社単独経営で業態を変化させ成長している企業も勿論ありますが、業界の環境変化が著しく速いIT業界においては、上記企業のようにM&Aを用いて業態を変化させ成長する企業が増えてきているのも事実です(前回のコラム参照)。

 

中堅企業、中小企業がM&Aで手を組み、これまで1社単独では実現できなかったこと、もしくは時間がかかることを実現する。そうしたM&Aが今後も増えて行くのは必然的な流れだと考えています。

 

とはいえ、M&Aというのは、そう簡単に実現、成功できるものではありません。単純に株式を買う、売る、という話では全く無いのです。

 

そこで次回は、M&Aを進める上で考えなくては行けない重要なポイントを、良くある失敗事例をご紹介しながら、お伝えさせていただきます。

 

日本M&Aセンター・業界再編部 瀬谷祐介