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M&Aを失敗させない重要ポイント・後半-IT業界M&Aコラム2019⑤-

前回は、M&Aを進める上で、失敗させないための重要なポイントについて、秘密保持、キーマン開示、条件交渉の3つの観点からお伝えさせていただきました。今回は後編として、M&Aを検討、実行する上で、非常に重要な「時間」というものにフォーカスをしてお伝えしたいと思います。

 

意思決定が遅いと、良い案件には巡り合えない。

 

これは、特に譲受側に言えることですが、M&Aの検討スピード・意思決定のスピードは、良いM&A案件を実行できるかどうかの非常に大きなポイントになります。

 

近年M&Aの件数が急速に増えていることと、その背景について過去の記事でもお伝えしてきましたが、近年M&Aは企業戦略の一般的な手法になっており、会社を譲り受けて成長したいという企業は年々増加しています。

 

そうした中、高収益・高成長だが後継者不在の企業であったり、革新的なサービス・プロダクトを持つベンチャー企業の譲渡相談を頂くことも多く、こうした優良企業はすぐに候補先が出てきて交渉が進んで行きます。

 

提案を受けてから、2週間後に結論を出していたのでは遅すぎます。

 

M&Aで成功している企業は、その企業規模に関わらず意思決定のスピードが非常に速く、即日、もしくは3日以内には結論を出して進めて行かれます。

 

「来月の定時役員会にかけてから」と悠長な検討をしていては、競合の経営スピード、成長スピードにはついて行けなくなるでしょう。意思決定のスピードを速めるには、意思決定者に必要十分な情報がいかに早く入るかです。

 

そのため、M&Aを本気で考えている企業は、初回提案時から、社長もしくは明確に権限移譲された役員が出て来られ、その場で意思決定に必要な情報を収集し、短時間で結論を出します。

 

一方、M&Aが実行できない企業の典型例としてありがちなのは、現場の担当者が意思決定者へ情報を上げるため、本質的ではない質疑・議論を繰り返し、恐る恐る上程し、そこで出た新たな宿題を解決するために、更に時間をかけようやく前向きな結論が出そうになった時には、既にその案件は決まっている、というもので、これは本当に良くある話です。

 

M&Aを検討しているが中々実現できない、という経営者は、ぜひその検討プロセスを見直していただきたいと思います。

 

時間をかけることで、様々な弊害が発生

 

M&Aの検討、実行、統合のプロセスは、正にその企業の経営スピードを表しています。

 

また、M&Aにおいて時間をかけることは、リスクや弊害が生じる要因ともなりえ、良い結果に繋がらないことが多いのも事実です。

 

M&Aの世界では、Time is enemyという言葉があり、時間をかけることにより下図のような問題が生じることが知られています。

 

 

 

例えば、長期間の検討により、情報開示者が増え、情報漏洩リスクが必然的に高まります。秘密保持や、情報開示に関する重要性は前回コラムで述べた通りです。

 

また、相手方が中々結論を出してくれないという状況は、心理的に相手を不安にさせるだけではなく不信感にも繋がります。そしてM&A後の経営体制にも疑問が生じ、慎重論が高まることにもなりかねません。

 

M&Aの交渉真っ只中の状況下では、経営にも制約がかかり、予期せぬ出来事への柔軟な対処がし辛くなります。売手側の立場としては、想定外の出来事により、譲渡のベストタイミングを逃してしまうということも現実的に起こり得ます。

 

経営スピードと同様に、M&Aの検討も実行も、早いに越したことがないのです。

 

慎重に検討することはもちろん大事ですが、「時間」がM&Aの結果に及ぼす影響というのも考慮した上で、最大限のスピード感を持って、進めることが、M&Aを成功させる上での重要なポイントです。


日本M&Aセンター 業界再編部

IT業界支援室 責任者
副部長 瀬谷 祐介

大手金融機関を経て、日本M&Aセンターに入社。IT業界の責任者として、数多くの友好的なM&A、事業承継を実現し、業界再編部を牽引している。これまでのM&A成約関与実績は50件以上。

業界再編部 瀬谷祐介