IT・ソフトウェア

【年別M&A】2017年・IT業界のM&A

「デジタル化の波」をM&Aによる異業種間連携で乗り越える

 

 

2017年のIT業界のM&A件数は748件でしたが、上記の通り、様々な業界の大手企業がIT企業(ベンチャー企業等)を買収するケースが特に多くみられました。

 

トヨタや東芝などの大手メーカーだけではありません。特に介護、翻訳、農業、教育といった人材集約型サービスは、「人口減少」という抗うことのできない経営課題を乗り越えていくために、デジタル化が急務であり、その手段としてベンチャー企業等とのM&A(資本提携)を有効活用しています。

 

いわゆる「イノベーションのジレンマ」を抱える大企業は、まったく新しい分野の技術を一から立ちあげるためのスピードやアグレッシブさにおいて、ベンチャー企業より劣っているといわれることもあります。

 

その中で大手企業は特定の分野に強みを持つITベンチャー企業と戦略的に連携を進めていますが、2017年に行われた代表的にM&A(資本提携)を2つ、ここでご紹介します。

 

 

トヨタ自動車×PKSHA Technology  ~先端技術獲得のための戦略的提携~

トヨタは2017年9月22日に東証マザーズ市場において株式公開を行ったPKSHA Technology社に10億円を出資しました。

 

トヨタが目下進める「自動運転技術」の精度を更に高めていくためには、障害物・道路標識・歩行者等の外部情報を正確につかむための、高度な画像・言語処理技術が必要不可欠です。

 

PKSHA Technologyは電通、伊藤忠商事、イオン、LINE等幅広い企業に対して、AIに関するアルゴリズムを開発・供給しており、トヨタのAIテクノロジーの開発・発展を進めるために重要な意味を持つ資本提携だと言えるのではないでしょうか。

 

 

センチュリー21×イエッティの資本提携 ~限られた人的資本で顧客満足を~

センチュリー21は、賃貸仲介におけるオンラインチャット接客システムに関するリーディングカンパニーであるイエッティと業務資本提携を行いました。

 

イエッティが持つノウハウをセンチュリー21が持つ大きなマーケットと掛け合わせることで、競争力向上を目指します。

 

AIを搭載したチャットUIを通じて情報を収集・分析する中で、賃貸仲介業務における煩雑な業務の負担を軽減すると同時に、1人1人の顧客に応じた適切なサービスを提供できる組織の確立を目指しています。

 

 

会社成長のカギは「人材・情報」の有効活用

M&A(資本提携)が近年急増している理由については、色々な見方があると思いますが、あらゆる会社が自社の成長と向き合う上で「お金以外の経営資源」を効率的に獲得していく必要に迫られていることが、1つの大きな理由なのではないでしょうか。

 

上記の例においては、トヨタは「情報と技術」、センチュリー21は「人材を有効に活用する仕組み」をそれぞれ得ることが、提携実現の主な目的と考えます。

 

昭和の高度経済成長においては、会社成長のカギは「資金力」でした。銀行からお金を借りて大きなレバレッジをかけてマーケットの拡大を目指していく方法がその時代では有効とされていましたが、平成から令和に至る今の時代における会社成長のカギは「人材と情報」これをいかに有効活用していくかに尽きるのではないでしょうか。

 

 

中堅成長企業はIPOからM&Aへ

会社が永続的に成長していくために、あくまでIPOを志向する経営者がひと昔前はスタンダードでしたが、近年においては、相乗効果の見込める会社と手を組む(M&A)選択をとる経営者が非常に増えています。

 

2017年9月、名古屋でバスロケーションサービスを手掛けるVISHはオーナーが40代で、会社の業績も非常に好調な最中、交通サービス「駅すぱあと」を手掛けるヴァル研究所(マザーズ上場)に全株式を譲渡し、上場会社グループとして、自社サービスの付加価値を高めています。

 

エーアイコーポレーション×ユビキタスのM&A

また、M&A=引退というイメージをお持ちの方も多いですが、成長戦略のためにM&A(売却)をされるオーナーは、経営陣として残り続け、様々な形でグループ全体の成長戦略に携わり続けています。

 

1985年創業の老舗組込みソフトウェア商社であるエーアイコーポレーション(以下AICP)は、2017年4月に東証JASDAQ上場の組込みソフトウェア開発企業であるユビキタスとM&Aを行いました。AICPとユビキタスの事業領域は補完関係にあり、M&Aの実現とによって大きく以下3点のシナジーが見込めました。

 

A) 製品ラインナップの拡充及び選択と集中の実現
B) ユビキタス社の海外展開の加速
C) AICP社のソリューション強化(カスタマイズや保守サポート)

 

M&A後は、ユビキタス・エーアイコーポレーショングループとして組込みソフトウェアNo.1ベンダーをという大きなビジョンを達成するべく、更なる挑戦を続けています。

業界再編部 IT業界支援室/製造業界支援室

太田 隼平

京都大学経済学部を卒業後、株式会社キーエンスでセールスエンジニアの経験を経て、日本M&Aセンターに入社。ITソフトウェア業界を専門とし、地域問わず中小中堅企業の事業承継及び成長戦略に関するコンサルティング業務に注力している。

京都大学経済学部を卒業後、株式会社キーエンスでセールスエンジニアの経験を経て、日本M&Aセンターに入社。ITソフトウェア業界を専門とし、地域問わず中小中堅企業の事業承継及び成長戦略に関するコンサルティング業務に注力している。