M&A全般

昨今増加しているM&Aプロセスにおけるトラブル事例

 

2019年2月26日に日本M&Aセンター最大のイベントであるM&Aカンファレンス「WiNNOVATION M&A Conference 2019」を開催いたしました。経営者を中心に2600名超のM&Aに携わる方々にご参加いただきました。

ご参加いただいた方には、会場の熱気を感じていただき、M&Aが経営においていかに注目されるものになってきているかをご認識いただけたのではないでしょうか。

 

M&Aは日本においても、大企業のみならず、中堅・中小企業も活用する一般的な手法となってきたといえます。それに伴い、M&Aに関連する業務を行う企業や個人が多くなってきています。

 

そしてその中には、実績・経験や知識がないままM&A支援をしてしまっている人たちが見受けられます。その結果、M&Aのプロセスにおけるトラブルが散見されるようになってきました。

 

M&Aを検討する経営者の方々がそのような事態に陥らないよう、カンファレンスでは、「M&A概論」「業種別M&Aセッション」「成長戦略型M&A」「企業価値・分析」「M&A会計・税務」「M&A法務」「PMI」など15の講座を設け、M&Aの実態をお話しさせていただくとともに、M&Aを検討するうえで、押さえていただきたい点をお話しさせていただきました。

 

今回は経営者の方々が実際にどのようなトラブルに遭遇しているのかをお伝えできればと思い、2つのパターンをご紹介させていただきます。

 

不十分な案件化により、「最終段階での大きな株価減額」「はしごを外される」事例

M&Aを進めるにあたり、一番初めの重要なステップは「案件化」です。案件化とは候補先に対するM&Aの提案を開始する前の準備に該当するものであり、

・企業の概要・強み・課題などをまとめた「企業概要書」

・客観的な株価の計算資料となる「企業評価書」

を作成することが一つのゴールになります。

 

これらはM&Aの交渉のたたき台となるもので、必ず作成しなければ適切な交渉は成り立ちません。しかしながら、これらは、公認会計士・税理士・弁護士などの専門家の助言も受けながら作成し、最短でも1,2か月かかるものです。

 

仲介会社によっては、仲介者が経験不足であったり、専門家が社内にいないことなどにより案件化が不十分である例、あるいは手間やコストの問題からこれらの成果物を簡素化してしまう、場合によってはそもそも作成することをしないケースもあるようです。

 

最も多いパターンは、企業の弱み・課題・コンプライアンスリスクなどネガティブな点を譲り受け企業が認識しないままに進めてしまい、交渉の最終段階である買収監査においてそれらが発覚するというものです。

 

その場合、譲受企業にとっては「こんなことは想定していなかった」ということになりますし、「重要なことを隠されていた。他にも同様なリスクがあるのではないか」と疑ってしまい友好的な商談どころではなくなってしまいます。

 

その結果、基本合意時に合意した金額から大きな減額が発生する、最終契約書に厳しい文言が入る、場合によっては破談になってしまうという恐れがあります。

 

このような事態になることを回避するために、適切な案件化を行い、①ネガティブな点に対する対策をする、②受け入れてもらえる相手先を探索する、などの手順を踏む必要があります。

 

提案先の管理をせずに広く提案活動を行い、「情報漏洩が起こる」事例

M&Aで最も気を付けなければならない点は情報漏洩です。オーナー経営者が会社や従業員、取引先を思っての円満な事業承継を考えていたとしても、情報漏えいに寄り噂になってしまうと誤った内容で伝わってしまうことがあります。

 

その結果、

・取引先が自社との取引の継続を見直してしまう

・社員がこのまま会社で働くことに不安を感じてしまう

などという経営上のリスクが発生してしまいます。

 

情報漏洩を発生させないためにやるべきこと、ノウハウなどは複数ありますが、最も重要なことは適切に提案先を管理することです。しかし、残念ながら仲介会社がしっかり管理していないことに起因する情報漏洩もあるようです。

 

通常、候補先を選定するときは、

①仲介者の考える候補先リスト(ロングリスト)を確認

②ロングリストをもとに、オーナーと仲介者でが提案の優先順位や提案不可先を決定

するという流れが一般的です。

 

このステップを踏まず、「候補先については一番条件良い先を連れてきますので、社長は待っていてください」と対応されたというオーナーがいらっしゃいますが、これが情報漏洩の元です。多少なりとも取引がある先や、過去競合したことがあるなど関係が良くない先などに知らないうちに提案をされてしまう可能性があるためです。

 

そのような先に提案されてしまうと、いくら秘密保持契約を締結しているとはいえ、それらの企業にとっては対象会社が譲渡を考えているということは「面白い情報」であるため、漏洩される可能性が高まってしまいます。そのために、ロングリストの精査、特に提案不可先の確認というステップは必須なのです。

 

次に重要な点は、仲介者の作成するロングリストの精度です。ロングリストはM&Aの相手先を選定するためのリストであるため、対象会社とのM&Aに関心を示す可能性が高い先をリストアップするものです。M&Aの買収ニーズは、代表者との継続的なコミュニケーション、具体的な案件検討におけるやり取りがあって十分に把握できるものです。

 

しかしながら、その業種や地域での成約実績に乏しい仲介者がロングリストを作る場合は、世の中で公表されている買収実績のある企業、中には業種や地域が近いだけの企業で構成されてしまうのです。

 

また、買収ニーズはあるという企業でも、実際にはなかなか交渉に踏み込んでこない企業もあります。ロングリストの精度が低いということは成約確率が低いということで、より多くの候補先に提案をすることとなります。提案をする先が増えれば増えるほど、漏洩するリスクも高まってしまいます。

 

そして、これらの一連のロングリストの管理をしていかないと、どこの先に提案をしてきたのか、各社がどのような検討段階にあるのかが、オーナーも把握できなくなってしまい、場合によってはアドバイザー自身が管理できなくなってしまい、漏洩した場合、どのから漏洩したのかがわからなくなってしまいます。こうなってしまうと所謂「出回り案件」となってしまいます。

 

このような重大なトラブルに見舞われないためにも、正しいM&Aの進め方を知っていただき、経験豊富な仲介会社を選び、適切な進め方で取り組んでいただきたいと思います。