物流・運送業

【2019年】運送・物流業界のM&A総まとめ

2019年の物流業界M&A概要

 

M&A情報を公表しているレコフのデータによると、物流業界の2019年のM&A件数は55件(2019年12月11日時点)である。2018年の85件から比べると大幅の減少ということになる。

 

磐栄ホールディングスの件数が2018年の17件から2019年は1件に留まったところが大きい。そのほか2018年はセイノー、福山通運、トナミホールディングス、SBSHD、鴻池運輸等、各上場企業がそれぞれM&Aを実行していたが、2019年はヤマトや安田倉庫、ハマキョウレックス等、上場企業の件数が伸びなかった。

 

今年の事例を振り返ると、譲り受け企業の戦略やM&A理由に非常にバラエティに富んだ年だったように思う。

 

2019年を代表する物流業界のM&A

SBSホールディングス×京葉自動車教習所、姉崎自動車教習所

6月SBSホールディングスが京葉自動車教習所、姉崎自動車教習所を譲り受けた。物流業界は長らくドライバー不足に悩んでいることは周知の事実であるが、人材確保の新たな方策が世に示された事例と言っても過言ではないだろう。

 

ドライバーを教習所の段階から確保していこうという発想である。新たに世にでようとするドライバーとの接触機会にもなり、さらには教習所の段階でグループのカラーを教育できるという点が非常に効率的であるのではないだろうか。

 

約6万社あるトラック運送業では新たな人材を確保するために、他社との差別化をアピールすることが非常に困難になってきている。そのような中新しい人材確保のモデルとして今後注目していきたい。

 

ザ・サンパワー×伊豆箱根鉄道

7月伊豆箱根鉄道のノンコア事業である介護事業を切り離し、ザ・サンパワーに譲渡した。

 

一昔前では事業を多角化することによって、様々な経営のポートフォリオを形成することで業績を伸ばしていたが、市場が縮小する現在では再度本業に集中する企業が増えてきている。今回もその一環と考えられる。介護事業は高レベルの経営のノウハウが必要であり、かつ人材不足の悩みが絶えない業界である。

 

介護事業専門の企業であってもその悩みには苦しめられているのが現状である。物流業界は今や業界再編の真っただ中にあり、どれだけ本業に磨きをかけ、他社と差別化していくか、ビジネスを進化させてステージを変えられるかが重要な経営課題となっている。今後もこうした動きには注目が必要である。

 

あじかん×井口産交、岐阜プラスチック工業×橋爪運輸

中堅中小企業では物流の内製化の動きも出てきた。

 

近年はリコーやJP、協和発酵キリン等、大手企業の物流部門の切り離しが目立っていた。これとは逆の動きが中堅中小企業では起こっているといえよう。製造から物流まで一貫したビジネスは非常に効率がよい。

 

さらには昨今は物流を外注している企業が、外注先の後継者問題やオーナーの高齢化で存続を不安視していると多く聞く。物流企業の取り合いになっている地域もあり、自前で物流部門を持っていることは経営の安心感へとつながり、戦略としては非常によい事例と言えるだろう。

 

 

その他のトピックとしては2019年はタクシー企業同士のM&Aが4件であり、昨年の2件から着実に増えている。タクシー業界も規模を大きくすることにより、ITによる効率化、新たなビジネスチャンスが生まれる業界である。後継者不在やオーナーの高齢化も他人事ではなく、この業界にも引き続き注目が必要である。

 

今後のM&A動向について

成長戦略型のM&Aが増加

物流業界のM&Aは今後さらに発展していくことになると考えている。

レコフのデータはあくまで公表された事例の件数であり、例えばトラック運送業を見ると6万社中98%が売上10億以下の企業である。そのため中堅中小企業のM&Aが多いが、そのほとんどが公表されていないものとなる。

実際弊社での成約実績を見ると昨年度一年での成約件数は11件であったが、今期は第3四半期までですでに11件に到達している。さらには相手探しを始めた企業数も増加(非公表)しているため、必然的に成約数も増加していくのではないだろうか。

 

中堅中小企業の譲渡の理由については

1. 後継者不在、オーナーの高齢化
2. 業界の先行き不安
3. 人材確保難
4. コンプライアンス対応への苦労
5. 成長戦略型(大手の力を借り、レバレッジをかけて更なる成長を遂げようという理由)

が主だったところである。

 

M&Aによって大手の力を借りることで、燃料費やトラック購入費、銀行借り入れの利息等の経費の大幅削減、さらには人材確保の悩みからの解放、その他連帯保証の解除等さまざまな悩みが解決する。

 

トラック運送業に至っては企業数が飽和件数を迎え、現在では減少の一途をたどっている。

すなわち限られたパイを奪い合う時代に入っているのである。必然的に再編は避けられない状態となっており、今後もM&Aが活性化していくであろう。

 

国の働き方改革が現場を理解せずに決められている、大手企業のみが達成可能なルールだという意見をよく聞くが、裏を返せばそれは国に対しての発言力を持たないことには変えられないということである。発言力を持つにはある程度の規模が必要であり、6万社ある企業がそれぞれ各自で戦っていくのではなく、手と手を取り合い、集まることによって実現できるのではないだろうか。

 

今後もこの業界の経営の一助となれるよう、引き続き尽力したい。

業界再編部 課長 調剤薬局業界支援室 室長/物流業界支援室

山本 夢人

東京大学工学部卒。野村證券株式会社、土木資材メーカーの副社長として経営に参画後、日本M&Aセンターに入社。経営者としての経験をもとに中小企業オーナーの立場に立ったM&Aを提案。現在は調剤業界および運送・物流業界担当の責任者としてM&Aを支援している。

東京大学工学部卒。野村證券株式会社、土木資材メーカーの副社長として経営に参画後、日本M&Aセンターに入社。経営者としての経験をもとに中小企業オーナーの立場に立ったM&Aを提案。現在は調剤業界および運送・物流業界担当の責任者としてM&Aを支援している。