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【1万字スペシャル対談(2)】SHIFT×日本M&Aセンターが巻き起こす、SI業界革命

(写真左から)SHIFT 代表取締役社長 丹下大氏、日本M&Aセンター 上席執行役員 渡部恒郎、日本M&Aセンター ベンチャー企業サポート室 竹葉聖

 

 

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SI業界大再編時代はチャンス

多重下請け構造を解消したい

 

日本M&Aセンター渡部 大企業もベンチャー企業も中小企業も、先見性のある経営者は、この転換期の中で現状のビジネスに安住することなく攻めの一手を投じていくでしょうね。

今後の業界のあるべき姿についてはどのようにお考えですか。

 

SHIFT丹下 業界で長く続いた多重下請け構造を解消したいです。

そのためには、大手ITゼネコンではなく、新しい形のプライムベンダーが必要になってくると考えます。具体的には、この業界でフォックスコン・テクノロジー・グループ(電子機器受託生産 (EMS) では世界最大の企業グループ)のような企業が出てくることだと思います。

アップル、デル、ヒューレット・パッカード、任天堂、ソニー、マイクロソフト……そうそうたる企業が、ハードウェアの製造を同社に依存しています。

 

私は、ソフトウェア開発でも同じことが起きると思います。プログラムを書くことは、ごく一部の天才を除いて今後ますますコモディティ化します。すると、サービスを作る会社とフォックスコンのようなシステム開発を請け負う巨大企業グループしか残ることができないのではないでしょうか。

 

開発のコモディディ化と業界の高齢化、この2つを要因として今後「SI業界大再編時代」に突入すると考えています。しかしこれは悪いことではなくて、業界をアップデートする大きなチャンスであり、業界があるべきに近づくことができると考えています。

 

“つながり”が業界を変える

 

丹下 とはいえ、SHIFTがコツコツと単独で成長していては何年経っても変えられないと思うんですよ。だからこそ今回の提携があります。日本M&Aセンターと共に、両社の強みを最大限に活かし、SI業界のコンソーシアムを立ち上げ、変革を加速していきたいと思っています。

 

渡部 日本M&Aセンターは全国の金融機関や会計事務所の提携先ネットワークを持っていて、日常的に非常に多くのSI企業とコンタクトを持っています。全国のSI企業にこのコンソーシアムをうまく活用してもらうことで、各社の成長につなげてもらえればと考えています。

 

 

丹下 SHIFTには大きく3つ、(1)大量のプライム(一次請け)案件、(2)採用力、(3)技術の標準化という強みがあるので、それを活かしてコンソーシアム参加企業がメリットを享受できるような仕組みを検討しています。さらには参加企業とのM&Aを実行していくことも考えています。

 

渡部 3つの強みについて詳しく教えてください。

 

丹下 (1)大量のプライム案件ですが、我々の幅広い業界のお客様から、「SHIFTならエンジニアのこと良く知っているでしょ?いい会社紹介してください」とお声がけいただくことが頻繁にあります。

SHIFTは仕様書のインスペクションも行っているため、「開発のゴール」をよく知っています。迷路はスタート地点から進むとなかなかゴールに辿り着けませんが、ゴールから辿ると迷うことなくスタート地点まで行けますよね。「今回の案件はこういうゴールだから、ここの分野に強いこの企業に依頼するのがベストですよ」と紹介することができたらいいなと。

 

渡部 二次請け三次請けの企業が、先端技術にかかわるエンドの仕事ができるようになる可能性もありますね。

 

丹下 そうですね。あとは(2)採用力。SHIFTはいま年間1,000人採用しており、ノウハウがあります。人手不足なので簡単なことではないですが、いろいろと工夫をしています。

 

渡部 最近も、人材採用のために思いきったCMをうっていましたね。笑

 

丹下 はい、世の中では珍しい採用にふりきった広告をテレビや交通広告で展開しました。笑 かけているコストをとっても、大きく勝負しています。例えばM&Aでグループ企業になることができれば、人手不足に悩む企業もグループ内で一括採用できたりしするので、メリットはかなり大きいと思います。

 

 

品川駅のモニターをジャックしたSHIFTの採用広告

業界イメージを変えるようなインパクトの強い採用広告を展開している

 

 

丹下 最後に(3)技術の標準化ですが、我々は開発の工程を分解して可視化し、標準化することを得意としています。そうすると、意外にITの技術職人でなくてもできる部分って結構あるんですよ。無駄な工数を大幅に削減できます。SHIFT自体のDNAがコンサル集団なので、めちゃくちゃ得意な部分なんですよ。

 

2つの型に当てはまらないM&Aはしない

 

渡部 SHIFTのM&A戦略についてもお聞きしたいです。

 

丹下 SHIFTが考えるM&Aには、大きく二つの型があります。1つ目は中堅中小のソフトハウスを譲り受ける「下請け構造脱却型」のM&A。これは、SHIFTの強みである営業力や採用力で伸びる余地のある企業をターゲットとしていて、SHIFTが強化したい開発力と業務知識を獲得することを目的としたM&Aです。

 

2つ目はホワイトハッカーなどの少数精鋭の技術系企業を譲り受ける「サービス価値・領域拡大型」のM&Aで、これはシフトが得意とする技術の標準化と相性が良い、高度な技術力を得るためのM&Aです。

 

この2つの型に当てはまらないM&Aはしません。

2019年に、日本M&Aセンターにお手伝いいただいたABテスト事業を行うアッションとのM&Aは、2つ目の「サービス価値・領域拡大型」のM&Aです。

 

渡部 アッションは、世界で2番目に売れているABテストツールを日本で最も販売していた企業ですね。

 

丹下 はい、ちょうどSHIFTでも、ECサイトのテストだけでなく、そもそものECサイトのUI、UXの部分も自社でできたら良いなと考えていたんです。テストをしてバグなく動く「当たり前品質の保証」から、さらにUI、UXというユーザーからの見た目も保証する「魅力的品質の保証」まで拡げたいな、と。

 

その点アッションには、世界トップクラスのABテストノウハウがあります。ただ、従業員が十数名の規模で、技術はあるがなかなかスケールしづらいという状況でした。SHIFTと組むことで大量のプライムの案件を一緒にやれますし、ABテストのノウハウを分解し、職人じゃなくてもできる部分を標準化できる確信がありました。ご紹介いただいた際は即決でした。

 

 

渡部 もともとあった自社のM&Aの型が決まっているからこそ、決断も早かったんですね。いまこの業界のM&Aは売り手市場ですから、「買いたい」と手を挙げる企業数は多く、トップの決断の早さがM&Aの成功を左右します。

「サービス価値・領域拡大型」の事例を伺いましたが、「下請け構造脱却型」のM&A事例はありますか?

 

丹下 こちらは昨年M&Aをしたシステムアイという会社が当てはまります。従業員100名、売上15億円程度の優良企業で、技術もあり経営上困っていることはないようでしたが、更なる成長戦略と後継者の育成が必要ということでご相談をいただきました。とあるプライムベンダーからの仕事を二次請け三次請けとしてやっていて、安定はしていましたが、社長は社員の成長機会ややりがい、キャリアの多様性について気にされていました。

 

結果として、成長意欲が旺盛な社員はSHIFTがプライム案件を紹介することによって、エンジニアの単価が大幅に上がりました。売上が増加すれば、エンジニアの給料もアップし、業務の環境が良くなり教育費をかけられるようになります。

採用ノウハウをシェアすることで、年間10名だった採用も、今年50名を目指し、連携しています。また、SHIFTグループ3,000名をまとめるバックオフィス基盤も使うことができ、コストも抑制できます。こうすることで、社員の皆様には安心・安定と共にやりがいや成長機会を与えることが出来ます。

 

渡部 わかりやすい事業シナジーですね。特に中小ソフトハウスだと、プライム案件を獲得する営業力も人的バッファーもないことが多いので、SHIFTグループに入ることで、営業力も人的リソースも確保できるということですね。

 

丹下 そうです。営業先が硬直している会社や、採用や離職に悩んでいる会社、もっと上のレイヤーで仕事をしたい会社など、シナジーが出やすい会社を積極的にM&Aしていきたいです。

 

SHIFTグループに入ったことで、従来の文化も大事にしつつ全く違ったステージに立つことができ、視野が拡がればいいなと思いますし、面白い仕事が更にできるようになったといわれるようにしたいです。事業承継の場合は、前経営者のハッピーリタイアと残る大事な会社従業員が幸せになれるそういったM&Aを常に意識しています。

 

譲渡企業の希望を尊重する「SHIFT PMI 100」

 

渡部 M&Aを成功に導くためには、PMI(Post Merger Integration)への注力も必須です。PMIについてこだわりはりますか?

 

丹下 SHIFTには、これまで数十社のM&Aを実施してきて、減損を1度も出していないというPMIノウハウがあります。その活動を拡大再生産させるため、現在は「SHIFT PMI 100」という形でPMIを型化しています。

 

渡部 PMIを型化、いかにもSHIFTさんが得意なところですね。笑

 

丹下 はい、得意ですし、大好物です。笑  M&Aは譲受けてからが勝負なので、PMIは本当に重要視しています。

 

また、PMIというと、一般的には役員を送り込んだり、制度を一緒にしようとしたりするケースが多いと思いますが、SHIFTでは遠心力経営と呼び、取り組んでいます。具体的に言いますと、グループでは同じビジョンに共感していますが、担当するプロセスやサービスによって向いている人や企業カルチャーは違いますので、その個性を尊重しお互いで組んでメリットがある部分は取り組んでいこうというスタイルでやっています。一方で、規模に応じて取り組みは違いますが、上場会社のグループとして最低限守らなければならないコンプライアンス/ガバナンス/目標は一緒に取り組んでもらっています。

 

あとは、M&Aも結局は人間と人間のふれあいなので、飲み会や部活などをやって直接交流するようにもしていますね。

 

 

社員を守りたいという気持ち

業界全体の給与水準をあげたい

 

丹下 SHIFTは従業員を大切にする会社なので、従業員のことを幸せにしたいという企業はぜひ一緒にやっていきたいです。

 

僕の話になりますが、自分が中学生くらいのころに、家庭内がとても暗かった時期があったんです。その影響なのか、昔から“僕が家族を守らなければならない”と思っていました。その考えは今も変わっていなくて、社員を守りたいという気持ちにつながっているのかなと感じます。

 

社員を大切にするというのは、いい理念のもといい仕事を与えるだけではだめです。いい理念だけではなく、いい報酬との両輪が必要。従業員が給与を理由に辞めてしまうのはもったいないと思いませんか?

 

日本のソフトウェア開発力は、世界でも指折りに優秀です。アメリカと比べると年収は低いですが、総じて日本のエンジニアの方がきめ細やかで、生産性も高い。

 

だからこそ、フェアな給与体系にしたいんですよ。SHIFTは他社にないほど人事データベースを充実させているという自信があります。従業員全員について、誰がどんな仕事をやっていたのかという履歴からスキル、メンタルスコア、得意領域 本人の希望、家族の状況(子供や介護)等、全て記録していますし、私が社員全員の給与までしっかり見て、成果に応じてフェアに昇給する仕組みをつくっています。マネージャー陣に対する評価内容のフィードバック体制も整えている。結果的には、全体で年間10%程度給与が上がっています。

これはSHIFTだけでやっていけばいいというのではなく、業界全体の給与水準をあげていきたいです。

 

渡部 このコンソーシアムの参加企業が数十、数百と増えることで、業界が変わっていく可能性がありますよね。

 

丹下 そうですね。SHIFT1社だけで業界の15,000社にアプローチするのは限界がありますし、ましてやいい会社に出会う機会はそう多くありません。日本M&Aセンターとの提携を通じて、我々は多重下請け構造を解消し、価値のある仕事をしている人が報われるような仕組みに変えたい。

 

もちろん、あらゆる会社をM&Aしたいというのではありません。オーナー社長が、手塩にかけて育ててきた自分の分身みたいな存在の会社を売ることに抵抗を持つ気持ちは理解できます。

 

だからこそ、資本提携だけではない繋がりを目指しているのです。このコンソーシアムにジョインしたうえでメリットを享受していただき、売上が増加し、社員の給料も上がって…という、良い循環を生み出したうえで、必要な場合はM&Aをしていければと考えています。

 

業界1位の日本M&Aセンターならではのノウハウ、知見、データベースを活用させていただきながら、仲間を増やしていけたらと思います。

 

渡部 世界的に、この先すべての産業構造、就労構造が「デジタライゼーション」によって劇的に変化していくことが予想されます。その中でIT企業が果たす役割は非常に大きいです。どんな企業もITなくして成長は見込めません。

 

これからのIT企業は、既存ビジネスの延長線上のアプローチではなく、企業間連携や積極的なM&Aによる外部リソースの獲得、戦略的な大手企業へのグループ入りなど、ダイナミックかつスピーディな決断が必要になり、そうした動きはよりいっそう活発になってくると言えそうです。

 

業界革命を一緒に起こしていきましょう!

ありがとうございました。

 

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